御年90歳の超ベテラン洋菓子職人のお店「潮騒」へ急げ！

記事制作 / みえ旅アンバサダー　家田美央

みえ旅アンバサダーの家田美央です。

普段はフリーランスのライター、フォトグラファーとして三重県中を飛び回っています。

第四弾となる今回の記事では、志摩市の老舗洋菓子店「潮騒」さんをご紹介します。

ご主人の中島巨（なかじまおおし）さんはなんと御年90歳！

今も毎日厨房に立ち、様々なお菓子をその手から生み出しています。

▼【潮騒】目次

• 70年近く営業する志摩市の老舗洋菓子店
• 今も昔も一番人気、絶品アップルパイ！
• クッキーやロールケーキなど焼き菓子いっぱい
• 90歳の店主、中島巨さんに迫る
• 潮騒の営業案内・アクセス・地図

70年近く営業する志摩市の老舗洋菓子店

「潮騒」さんは今から68年前に近鉄鵜方駅そばで開業しました（上の画像は旧店舗です）。

お店はずっと巨さんと妻の久子さんが二人三脚で営業してきましたが、2021年秋、久子さんが逝去。

おしどり夫婦として知られた巨さん久子さんご夫妻。

さすがの巨さんも

「この時ばかりは店を辞めようかと思った」

と落ち込んだそうです。

また、建物の老朽化もあり、2022年に入ってすぐお店を閉店してしまいました。

「長年親しんだ味がもう食べられなくなる」

と、多くのファンから惜しまれる最後でした。

しかし、巨さんはお菓子作りを辞めるつもりはありませんでした。

息子家族と同居する自宅に工房を構え、お店を再出発する計画が進められており、冷蔵庫やミキサー、オーブン、天秤計りなどの製菓道具は大切に保存され、再登場をじっと待っていました。

閉店から半年後の2022年7月、ついに新しいお店がオープン！

オープン当日は開店を今か今かと待ちわびる多くのファンが営業時間前から集まり、テレビの取材も訪れたほどで、潮騒さんの人気ぶりを改めて証明する機会になりました。

今も昔も一番人気、絶品アップルパイ！

現在、潮騒さんでは焼き菓子を中心に製造されています。

まずご紹介したいのが、今も昔も一番人気の「アップルパイ」。

バターがじゅわっとにじみ出てくるタイプではなく、パイ生地はあくまでもさくさくと軽い食感で、甘く炊いたリンゴが入っています。

見てください、この美しく開いたパイの層を！

パイ生地は小麦粉生地とバターをおり重ねることで薄い層を作るのですが、今もこの作業を巨さんは麺棒を使った手作業で行っています。

昨今、多く（ほとんど）の洋菓子店では、パイシーターやパイローラーと呼ばれる電動の伸ばし機械を使うので、手作業のパイ生地は本当に貴重です。

集中力を必要とする作業なので、来客が少なくなった夕方以降に行っているそうです。

また中に入れるリンゴは、毎年秋に一年分のリンゴを仕入れ、皮をむいて刻んだのちに甘く炊いて保存しておきます。

数百キロものリンゴを手作業で仕込むそうで、その作業だけでも気が遠くなりそう…。

アップルパイ作りにはトータルで3日間もかけており、妥協のないおいしいモノづくりを今も追い求めています。

なのに価格は1個230円と、今時こんなお安くていいの？と消費者にはうれしい限り。

家族に、お土産にと、まとまった数を購入する人が多いというのも納得です。

クッキーやロールケーキなど焼き菓子いっぱい

パイ生地のほかにも、クッキーやパウンドケーキなどの焼き菓子を製造しています。

まずはクッキー。

左から「モカしぼり」、「ピーナツ」、「チョコしぼり」、「ダイナモン（塩）」。

こちらもさくさくと軽い食感で、甘さ控えめで後味がさっぱりしているため、ついつい2つ3つと手が出てしまいます。

他にも「メープル」などのクッキーもあるので、何が並んでいるのかは訪れてからのお楽しみ。

いずれも1袋150円と、こちらもうれしい価格。

お店を訪れると、これらのクッキーやアイスコーヒーがサービスされます。

「せっかくこんな不便なところまで来てくれたんですから」

と、お店を手伝う息子の妻の初美さんの温かい心配りです。

焼きあがったお菓子を型から外す初美さんや、クッキーをひとつひとつ絞る孫の璃奈さんも、今ではすっかり慣れた手つき。

お菓子の製造だけでなく、口下手な巨さんに代わって接客したり、SNSでお店の魅力を伝えたりと、お店を支える貴重な戦力として、ご家族も共にお菓子作りに励んでいます。

また、「フロランタン」230円もおすすめです。

アーモンドとカラーチェリーをたっぷり乗せ、飴がけしたお菓子で、ざっくりとした歯ごたえとしっかりとした生地の味わいが楽しめます。

見た目もカラフルでかわいらしいですよね。

他にも、フルーツをたっぷり入れて焼き上げた「フルーツケーキ」や、あんずジャムを巻いた「ロールケーキ」、昔懐かしの「レモンケーキ」、パイ生地でアーモンドを挟んだ細長い「アーモンドパイ」などいろいろな焼き菓子が店頭をにぎわせています。

また、昔の店舗で評判だった「たぬきケーキ」も、月2回だけ販売を再開。

ちょっととぼけた顔つきのたぬきたち、販売日は決まっていないので、Instagramの告知をこまめにチェックしてくださいね。

日によって並べられる商品は異なりますが、今も50種類ほどのお菓子をレパートリーとしているそうです。

90歳の店主、中島巨さんに迫る

店主の中島巨さんは、今も朝7時には厨房に立つそうです。

60年以上使用しているという相棒のオーブンに火を入れ、適切な温度になるまでの間に朝食を済ませます。

今時のデジタル表示のオーブンと異なり、巨さんの相棒は温度計や温度調節つまみがアナログ表示！

オーブンが温まったら、準備しておいたお菓子を次々と焼き上げていきます。

最近ブームのカヌレもレパートリーに加わっています。

潮騒さんのカヌレは型が大きめで、1個でも食べ応え満点。

「カヌレない？」

と、これ目当てに訪れる人もいて、早くも人気者の予感です。

年季の入ったミキサーや天秤計りは今も巨さんを支える大切な仕事道具。

丁寧にメンテナンスされ、おいしいお菓子を生み出しています。

厨房には一冊のノートが。

これは門外不出の巨さんのレシピ帳です。

中を見せてもらうと、書かれているのはメニュー名と材料の分量のみで、作り方は一切記載されていません。

すべて巨さんの頭の中に作業手順は入っているそうです。

「私たちのレシピ帳には手順まですべて書いてあります。おじいちゃんのを見ても、私たちでは作れません」

初美さんも璃奈さんも、菓子職人としての巨さんの仕事ぶりに改めて舌を巻きます。

実は巨さんは東京出身。

終戦間近に疎開先として志摩市へやってきました。

学校を卒業後は東京のパン屋で修業を積み、志摩市へ帰ってきます。

最初はパン屋をしていましたが、お菓子を出したところそれが評判となり、23歳の時に洋菓子店「潮騒」を開業。

開業当時、志摩市には洋菓子店がなかったようで、大人から子供まで多くの人が潮騒さんの味を求めて訪れたそうです。

「子供たちがお小遣いで買えるお菓子でありたい」

との思いから、価格もずっと据え置きで頑張っています。

家族2代、3代でこの味に親しんでいる地元の常連客が多く、移転してからはテレビなどで紹介されたこともあって、観光客の来店もずいぶん増えたんだそう。

最近では目や耳に不調を抱いていますが、巨さんはゆっくり休むつもりはありません。

「あと２～３年は頑張りたい」

と、自分が元気なうちはお菓子を作り続ける、生涯菓子職人宣言をしてくださいました。

お菓子を買いに来た常連客が

「おじいちゃんの顔が見たくて来たわ」

と、気軽に挨拶していきます。

お店の壁には常連さんの手による巨さんと久子さんの似顔絵が飾られています。

口下手でしゃべるのが苦手だと笑う巨さんですが、お菓子作りひと筋の誠実な人柄と、何よりおいしいお菓子に魅力を感じて、たくさんのファンがいるのも納得でした。

そして巨さんを支える初美さんや璃奈さんとの絆も、お店のあたたかな雰囲気に結びついていると感じました。

一日でも長くおいしいお菓子が食べられるよう、応援していきたいお店でした。

潮騒の営業案内・アクセス・地図

【住所】　志摩市阿児町鵜方1912-3

【電話番号】　0599-43-0416

【営業時間】　10:00～18:00　※売り切れ次第終了

【定休日】　 月曜日、火曜日

【公共交通機関でのアクセス】

・近鉄「鵜方駅」から徒歩約10分

【車でのアクセス】

・近鉄「鵜方駅」から車で約3分

【駐車場】　2台

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