明治期の醤油蔵へタイムスリップ!国の登録有形文化財の醤油蔵見学&紅くるりドレッシング作りを体験

明治28年に創業された伊賀市の醤油蔵「福岡醤油店」で、国の登録有形文化財にもなっている醤油蔵を蔵人の案内で見学してきました。そして、自家栽培の「紅くるり大根」を使ったドレッシング作りと、醤油の食べ比べも体験。深くておいしい日本の食文化を体感してきました。

記事制作 / みえ旅アンバサダー 家田美央

▼ 目次

 

『三重の「イマしかない」「ココしかない」体験を楽しみに三重を訪れよう』をコンセプトに、新しい旅のカタチを提案する「みえのイマココ旅」。

自然、歴史・文化、伝統、ものづくり、食、ナイト&モーニング、サスティナブルをテーマにこれまでにない体験を提供してくれています。

そこで、伊賀市にある醤油蔵「福岡醤油店」さんで体験できる「百年蔵で明治時代にタイムスリップ!蔵仕事の見学&紅くるりドレッシングづくり体験」に参加してきました。

毎日のように食している醤油ですが、どんな方法で、どんな場所で作られているのか、詳しく知らなかったので、訪れる前から興味津々。

醤油づくりにかける蔵人さんの熱い思いも相まって、とても印象的な体験となりました。

 

明治28年創業!130年の歴史を持つ「福岡醤油店」

まずは今回訪れた「福岡醤油店」さんについて簡単におさらい。

明治28年、阿山郡島ヶ原村(現在の伊賀市島ケ原)にて福岡長太氏によって創業されました。

現在の主力製品は「はさめず」という名前の醤油。他にも、はさめずを使ったポン酢醤油や、味噌、たれ、ドレッシングなど、様々な調味料を製造しています。

最近ではハラル認証を取得した商品も開発するなど、新しいチャレンジにも積極的に挑戦。

スーパーなどで目にしたことがある人もきっと多いはず。

いよいよ醤油蔵見学へ

「みえのイマココ旅」の体験プランに参加するには、アソビューじゃらんのウェブサイトで予約が必要です。

事前予約したのち、指定の日時に「福岡醤油店」さんを訪れました。

あたりにはふんわりと醤油の香りが漂っていて、「醤油蔵にやってきた!」という思いを強く感じます。

醤油蔵の案内人を務めていただくのは、現役の蔵人である川向伶実さん。

妹の志季さんとともに、「双子の蔵人」として福岡醤油店を盛り立てています。

蔵の入り口を入って最初にするのが、ヘアキャップとシューズカバーを装着し、手指を消毒すること。

食べ物を扱う場所なので大切な準備です。

圧巻!まるで博物館のような醤油蔵

いよいよ醤油蔵の内部に入っていきます。

実はこの蔵、創業当時よりずっと使い続けられてる建物で、多少の改築はありましたが、ほとんどが明治期の姿のままを残しています。

重厚な梁と土壁に覆われたどっしりとした造りの醸造蔵から歴史の重みを感じます。

冬だけの特典、製麹室で麹づくりを見学

まず最初に案内されたのは、大豆に麹菌をつける「製麹(せいぎく)」を行う部屋。

この日はすでに作業を終えた後だったので、麹づくりについて伶実さんが作業の写真を交えて説明してくれました。

現代の醤油作りでは脱脂大豆を使い、機械で麹を作ることが多いのですが、福岡醤油店さんでは現在も国産の丸大豆を使い、昔ながらの手作業で麹を作っています。

 

ここで麹づくりについて簡単にご説明。

大釜で蒸した大豆と小麦に麹菌をまんべんなく混ぜ合わせ、「麹蓋(こうじぶた)」と呼ばれる木製のトレイに広げます。

麹菌が活発に活動できるよう「製麹室」へと運び入れます。

製麹室をのぞいてみると、部屋の中ではやかんを乗せたストーブが炊かれており、麹にとって快適な温度と湿度が保たれています。

定期的に麹の塊をほぐす作業をし、麹の成長を見守ります。

3日後には大豆や小麦の表面が緑色に代わり、麹が完成。

製麹は職人の経験と高い技術が必要な、醤油作りの中でもとても気をつかう工程です。

 

製麹作業は冬の寒い間しか行われないので、今回見学させてもらえたのはとても貴重な体験となりました。

木桶が並ぶ醸造蔵で歴史に触れる

続いて案内されたのが醸造室です。

高さが人の身長よりずっと深い、巨大な木桶が並んでいます。

これは吉野杉で作られた木桶だそうで、なんとこの桶も創業当時からずっと使い続けているものなのだそう。

いくつも並ぶ木桶の中には「もろみ」と呼ばれるものが入っています。

これは麹に塩水を混ぜたもので、最初のうちは大豆の粒が確認できますが、次第に溶けてドロドロになり、色が濃くなっていきます。

木桶はそれぞれに中身が異なっており、今年仕込んだもの、1年間かけて醸造したもの、2年以上醸造したものなど、様々な状態のものを見せていただきました。

醤油作りの工程の中で最も長い時間を過ごすのが、この木桶での仕込みです。

福岡醤油店さんの醤油は、1年半から2年以上をかけて熟成されます。

木桶にも建物にも福岡醤油店独自の微生物が住み着いているので、蔵を建て替えたり、木桶を新調したりすれば、この味が出せなくなるんだそう。

冬の間はとても静かですが、暑い夏になると酵母菌や乳酸菌の活動が活発になるため、プチプチともろみが泡立つ様子が見られるそうです。

ぜひ次回は夏の様子を見てみたい!

現存する国内唯一の「キリン式圧搾機」

十分に熟成されたもろみは、麻の袋に入れられしぼられます。

そこで登場するのが「キリン式圧搾機」です。

名前通り、キリンの首のように長い棒の先に重りをつけ、てこの原理でゆっくりともろみをしぼっていく装置です。

おそらくこの形の圧搾機は日本国内でもここにしか残っておらず、文化庁から登録有形文化財に指定されている大変貴重な道具です!

もろみは強い力でしぼると余分な雑味が出てしまい、おいしい醤油にならないそうです。

時間はかかりますが、キリン式圧搾機でゆっくりとしぼることで、醤油のおいしさだけを抽出します。

欅の木で作られた長い棒は大変硬く、1トンもの重量に耐えられるんだそう。

こんな貴重な道具が展示だけでなく、今も現役で使われているとは!

しぼった醤油は別のタンクに移され、瓶やペットボトルに充填されたのち、出荷の時を待ちます。

職人さんの経験と技術はもちろん、この蔵独自の微生物の営みと、古い道具ならではの醤油にも環境にも優しい働きが、長年愛される味を作り出していることを体感できました。

案内をしてくれた伶実さんの口からも、醤油への愛情と、その味を守り続ける誇りを感じることができました。

紅くるり大根を使ったオリジナルドレッシング作り

醤油蔵見学が終わったら隣に立つ邸宅に場所を移し、ドレッシング作りを体験します。

材料は、はさめず醤油、はさめずのお酢、柚子のしぼり汁、自家農場で採れた「紅くるり大根」を使います。

材料や道具はすでに用意されているので、伶実さんの指導に従いながら計量し、混ぜていきます。

ちょっと味見をして、自分好みの味に仕上げていくのが楽しい!

瓶に貼るラベルも手づくりして、私オリジナルの「紅くるりドレッシング」が完成!

家族に食べてもらうのが楽しみです。

醤油食べ比べでお気に入りのお土産を見つけよう

体験メニューも残りわずか。

次は販売所へ移り、醤油の食べ比べを行います。

福岡醤油店さんでは「はさめず」醤油にも「こいいろ」と「うすいろ」があり、三重県産丸大豆を使い長期間熟成させた「特選はさめず とこしへ」、塩水の代わりに醤油で仕込む「特選はさめず いにしへ」など、さまざまな種類の醤油があります。

ほんの1滴ずつ舐めただけでも味の違いは明白。

自分が使う分、家族へのお土産の分と、いろいろな商品が買えたのもうれしい。

醤油作りの奥深さと伝統を守るプライドを実感

およそ1時間半の体験はこれで終了。

最後まで付き添い、様々な質問に答えていただいた伶実さんに感謝です。

醤油の仕込み作業は冬の寒い時期に行われるものが多いので、ぜひ今の季節に訪れてください。

毎日の食卓に上がるあの「醤油」への見方が変わりますよ。

福岡醤油店の営業案内・アクセス

【住所】 伊賀市島ケ原1330

【電話番号】 0595-59-3121

【営業時間】 9:00~17:00

【定休日】 祝日、大型連休(蔵見学には事前予約が必要)

【公共交通機関でのアクセス】

・JR関西本線「島ケ原駅」から徒歩約25分

【車でのアクセス】

・名阪国道「上野IC」から車で約16分

【駐車場】あり

【URL】公式サイトはこちら

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家田美央

福岡醤油店さんは規模は大きくないですが、文化財にも指定される歴史ある趣が素晴らしく、見どころいっぱいです。
またスタッフさんがとてもフレンドリーで、終始楽しく取材させていただきました。
今回、冬季限定の特製の米麹を購入したので、これで酵母を起こしてパンを焼きたいと思います。
ビバ発酵!!

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