霊場伊勢山上 飯福田寺

- 険しい岩が立ちはだかる山中の寺
- 伊勢山上(いせさんじょう)にある飯福田寺(いぶたじ)は、大宝元年(701年)に役行者(えんのぎょうじゃ=呪術者)が巨大な岩の岩窟の陰で100日間こもって修行した場所。
伊勢山上は標高390mと決して高くはないが、険しい岩が立ちはだかり、一筋縄ではいかない道のりだ。

- 飯福田寺の知られざる歴史
- かつて北畠家の祈願寺であったという飯福田寺は、寺領として五百石を受けていた。
そのため、興隆を極めていたが、北畠家は滅亡。しかも戦火によって、寺は焼失してしまう。
そののち、織田信雄によって復興されるが、織田家断絶とともに再び衰退の一途を辿る。

- 庇護と滅亡を繰り返し…
- そんな有様だったからか、蒲生氏郷がここの伽藍を取り壊して、松坂城の材料にしたといわれている。
しかし近世となってから、津藩の藤堂家の庇護を受けたことによって、伽藍が再建され、行場も補修された。
庇護と滅亡の繰り返し…行場の岩たちもその歴史を刻んできたのだろうか。

- 鎖で登る「油こぼし」
- 伊勢山上の行場は、明治以前は修験者以外、入山できなかったそうだが、今は誰でも行けるようになった。
行場の第一関門は「油こぼし」。
ここは大岩に鎖が垂れ下がっており、ギョッとする。
しかし、ザラザラとした岩のため、意外に上りやすい。

- 断崖絶壁の恐怖におののく「鐘掛」
- そしてお次は難所の「鐘掛」。
岩屋本堂の横を登り、その上の丸い岩の上に登るのだが、行けるかどうかより先に、断崖絶壁のため恐怖で足が動かない人も。
でも大丈夫!
う回路もあるため、どうするかは自己責任で。無理をしないことも修業のうち、これをよく心に留め置いてほしい。

- 無心になるのも修業のうち
- 鞍掛岩、小尻返し、蟻の戸渡、飛び石など、ユニークな名前の行場が続き、怖かったはずの岩登りがだんだん楽しくなってくるはず。
楽しいと言ってしまったら、修業じゃない…?でも、無心になることが新しい世界を見せてくれるはず。
ここは、一歩一歩を着実に行こうじゃないですか。
-
入山前には飯福田寺の受付所へ行き、入山名簿に記帳して入山料を納める。説明によると最近は岩登りの道具を使って登り、岩を傷つけるフトドキ者もいるらしい。ここはあくまで歴史がつないできた場所なのだから、心して登ることが大切。 -
行場は表と裏があり、どちらもユニークな岩の形をしている。「油こぼし」「平等岩」「獅子が鼻」などどうしてこの名になったのか形を考えながら登るのも楽しい。 -
新緑、紅葉や桜の季節には山寺ならではの絶景を楽しむことができる。 -
飯福田寺を起点として馬蹄形の尾根をブーメランのように周回して戻ってくる4kmのルート。内容が濃いので、2時間以上かけてじっくり集中しながら挑戦してほしい。

表行場・裏行場にはたくさんの霊場・難所があり、吉野の大峯山以上といわれています。スリルを味わいたい人々にはもってこいのコースです。登りやすい土質ですが慢心せず、慎重に登ってください。
毎年4月の開山式と10月の閉山式には、数十名の先達が山伏姿でほら貝を吹きならしたり、火渡りをしたりする昔ながらの行事が行われていますよ。
※10月に閉山式を行いますが、行場には一年中行くことができます。
コンシェルジュ
ライター 宍戸厚美さん