都会でも大人気!伊賀の匠「馬場建具店」伝統工芸“組子”の行灯づくりとグルメ・お土産店満載の伊賀まち歩き【みえのイマココ旅】
忍者のふるさと、伊賀。山々に囲まれた盆地で育まれた匠の技、伝統工芸「組子」の行灯づくりと、伊賀を愛する匠「馬場建具店」馬場幸次さんによる特別な伊賀まち歩きの体験プランを紹介します。
記事制作 / みえ旅アンバサダー キャスターマミ
撮影協力 / みえ旅アンバサダー さんぺい
▼目次
伊賀ブランド「IGAMONO」とは
伊賀流忍者の里、三重県の西部に位置する伊賀市。山々に囲まれた盆地で育まれたのは、忍者の歴史だけではありません。伊賀くみひもや伊賀焼といった伝統工芸、伊賀米や伊賀牛、お酒、城下町の老舗和菓子。それらの良品と技、ものづくりに専心する人々を、伊賀ブランド「IGAMONO(いがもの)」といいます。
この記事では、IGAMONOの中から「伊賀の格子行灯」を作る職人、馬場建具店の店主、馬場幸次さんを紹介します。
写真は、JR関西本線「新堂駅」前にある「SHINDO YARDS図書館 BOOKMARK STORAGE」隣の北伊勢上野信用金庫ショーウィンドウに飾られている馬場さんの組子作品。三種類の大きな作品の美しさは圧巻です。
伊賀の匠「馬場建具店」馬場幸次さん
馬場建具店とは
忍者市駅こと伊賀鉄道「上野市駅」から徒歩10分の場所に店舗を構える馬場建具店。1級木製建具製作技能士、2級建築大工技能士、全技連建具マイスターなどの資格を持つ二代目店主の馬場幸次さんは、三重県を代表する匠です。
窓やドア、家の中の襖や障子などの建具の技術を父から受け継ぎ、さらに、日本の美しい伝統工芸を広めている馬場さんは、数多くの受賞歴を持つ技術力の高さと親しみやすく明るいトークで、ファンを増やし続けています。
伝統木工技術「組子」
組子とは、古くから用いられてきた、釘やビスなどの金属を使わずに組み立てていく日本の木工技術です。
美しく繊細な幾何学模様。伝統的なものもたくさんありますが、写真の模様は馬場さんのオリジナルデザイン「三重桜」です。この作品は、2020年の東京オリンピックで、メダルを納めるケースのサンプルとして作られました。しかし、6,000個制作できるか…とのことで、残念ながら実現しなかったといいます。
組子で表現された五角形の桜は、行灯など、馬場さんの他の作品にも使われています。
組子の行灯づくり体験
匠と作る!組子のワークショップ
馬場さんは、15年ほど前から各地のイベントに申し込み、伝統の技術を広める活動をされてきました。参加者の声を反映させ、ワークショップの形もブラッシュアップ。今では様々なオファーがあり、日本全国に留まらず、海外にも出向いて組子の魅力を伝えています。
今回はみえ旅アンバサダー・キャスターマミが、組子の行灯づくりに挑戦してきました!
武家屋敷 赤井家住宅に集合
ワークショップは、国の登録有形文化財(建造物)に指定されている伊賀市上野忍町の「赤井家住宅」で行われます。城下町を感じる武家屋敷の敷地内には、母屋をはじめ、茶室、土蔵、自由に観覧できる日本庭園が。建物は、伊賀の文化を体験できる場として活用されています。
武家屋敷赤井家住宅
0595-51-7578
9:00~22:00
毎週水曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
あり(8台)
今回の組子づくり体験は、赤井家住宅の土蔵で行います。土蔵の扉を開けると、暗い部屋の中の壁や天井に、行灯の模様の光が浮かび上がっています。幻想的な演出は、お客様を喜ばせたいという馬場さんの想いから。歴史を感じる蔵の雰囲気に、作品の美しさが際立ちます。
ねじり組子の行灯
体験するのは、三重県産のヒノキで作られた11cm角の五面体「木漏れ灯(こもれび)」と名付けられた行灯づくり。ねじり組子という模様で、木が網目のように組み上げられています。この作品は、三重県が開催する「みえの木製品コンテスト2023」の家具・インテリア部門で優秀賞を獲得。そんな素敵な作品がどうやって作られているのか、いよいよ体験のスタートです。
体験の流れ
机の上に、あらかじめ材料がセットされています。
ヒノキの良い香り。馬場さんの作品は、全て三重県産のヒノキとスギを使っているそう。
棒状の木の材料には、指が入らないくらいの凹凸があります。
「以前は機械で作っていたけれど、全自動の機能が壊れて左右に動かなくなって以来、目で見て材料を動かしながら削るようになった。ほら、手作りでも全部同じ間隔でしょう?」と馬場さん。これから組み立てていくとさらに驚かされますが、この正確さがまさに匠の技です!
馬場さんに教わりながら、縦と横に組み合わせていきます。ちなみに、縦・横のパーツは形状が異なるので、間違ってしまうとはまりません。
まるで編み物のように、ねじり組子の美しい模様があっという間に出来ていき、不思議な感覚を味わえます。
続いては、道具を使って材料を持ち上げ、小さな穴に新しいパーツを組み入れていきます。
このキットは、未就学児でも作ることができるそう。確かに、パズルをする作業に似ています。
スポッとはまって、コースターの形が完成しました。馬場さんのオリジナル行灯「木漏れ灯」ワークショップは、この形を5枚作り、サイコロのように立体型に組み立てていきます。
5組の平面の組子が出来ました。赤や青の色が付いているのは、馬場さんが用意してくれた材料です。好きな色を好きな場所に使って、自分だけのオリジナル作品に仕上げましょう。
ボンドを軽く付けて、マスキングテープで固定していきます。
どこの辺とどこの辺がつながるのか…算数の図形問題みたい。
「お客様からのオーダーで建具を作る時も、図面は書き起こさず、頭の中に描いている。そうすると、現場で臨機応変に対応できます。お客様の無理難題を叶えてきた。職人を育てるのはお客様です」。馬場さんの話が聞きたくて、ワークショップに何度も参加したり、オーダーメイドの商品を注文するリピーターさんが全国にいます。
サイコロの形になりました。こうやって作られているのか!と感動。
マスキングテープをきつく巻き付けて、ボンドが乾く間、馬場さんに伊賀のまちを案内していただきます。
匠と行く!伊賀まち歩き
作品完成までの1時間、赤井家住宅からまちへ繰り出しましょう。伊賀に生まれ、伊賀に育ち、伊賀の伝統工芸を今につなぐ馬場さんによる、一味も二味も違った観光案内が始まります。
史跡旧崇広堂
「伊賀にも赤門があるんやよ」と馬場さんがまず案内してくれたのは、国の史跡に指定されている旧崇広堂。江戸時代、津の藩校・有造館の支校として作られた藩の学校です。建物が残っているのは、全国的にも珍しいのだとか。
史跡旧崇広堂
0595-24-6090
一般:300円(20名以上の団体:200円)
小学生以上 高校生以下:100円(20名以上の団体:60円)
9:00~16:30
年末年始(12月29日~1月3日)
なし
伊賀鉄道「上野市駅」から徒歩で約10分
名阪国道「上野IC」または「上野東IC」から車で約5分
むらい萬香園
伊賀に来たなら、忍者体験は欠かせませんよね!馬場さん馴染みのお茶屋さん「むらい萬香園」では、本物の手裏剣が体験できます。「ダーツと同じように投げてみて」と教わり、いざ挑戦。重くてなかなか難しかったです。
それにしても、「馬場建具店」の文字が入った特別な忍者衣装をまとっているだけあって、馬場さんは手裏剣もお上手なのですね。
・手裏剣体験 5枚 ¥300
さて、手裏剣修行中に、忍者パフェや抹茶など豊富なメニューから選んでいた、ぜんざいとおしるこが届きました。寒い日だったので匠と一緒にほっこり温まります。
・ぜんざい ¥800
・おしるこ ¥600
記念写真もバッチリ!と楽しんでいると、むらい萬香園のご主人登場。伊賀の有名人であるお二人の掛け合いが面白くて、なんだか贅沢な気分になりました。
むらい萬香園
0595-21-1173
9:00~19:00
木曜日
伊賀上野城が見えるスポットも
城下町として栄えたこのエリア。碁盤の目に広がる街並みの隙間から、伊賀上野城が時折顔をのぞかせます。馬場さんの案内でなければ、見落としてしまっていたでしょう。
だんじりや神輿、鬼行列が盛大に練り歩く秋の上野天神祭、お城のライトアップも楽しめる夏の伊賀市市民花火大会などを毎年撮影されているみえ旅アンバサダー・さんぺいさんも、「この位置から天守閣が見えるとは!」と新しい発見があったよう。伊賀愛にあふれる馬場さんの案内で、伊賀の魅力をあらゆる角度から知ることができます。
伊賀上野城
0595-21-3148
大人600円(500円)
小人300円(250円)
( )内は、30名以上の団体料金
9:00~17:00(入館は16:45まで)
年末(12月29日~12月31日)
周辺に約500台あり(有料)
・伊賀鉄道「上野市駅」から徒歩約8分
・名阪国道「上野東IC」から車で北へ約10分
・名阪国道「中瀬IC」から車で西へ約10分
御菓子司おおにし
「この辺りにある100年以上続く老舗のお菓子屋さん、今も10件は下らんのちゃうかな」と馬場さん。「御菓子司おおにし」さんの人気商品は、忍者をかたどった最中と、上野天神祭の鬼行列に登場する「ひょろつき鬼」の最中。粒あんがたっぷり詰まっていて、食べ応え抜群です。
・鬼屋敷最中 ¥130
住所 三重県伊賀市上野中町3009-1
電話番号 0595-21-1440
休日 不定休
西町や かかん
伊賀ブランド「IGAMONO」が一堂に会するお土産どころ。「伊賀焼の炊飯土鍋で伊賀米を炊いたら最高やよ。それに伊賀の漬物があれば完璧」。馬場さんの軽快な解説に、ついついお買い物がすすむお客様も多いのだとか。
住所 三重県伊賀市上野西町3370
電話番号 0595-51-5535
休日 不定休
忍者のフォトスポットがいたるところに
商店街には、いたるところに忍者が隠れています。お気に入りのフォトスポットを見つけて、写真を撮りながら楽しんでくださいね。
馬場さんが写真を撮ってくれたり、優しく見守ってくれたりします(笑)
和菓子処 湖月堂
伊賀銘菓「丁稚ようかん」は、伊賀に多数あるほとんどのお菓子屋さんで作られています。プラスチック容器に入っているのは、一般的な練ようかんより随分と柔らかいため。水ようかんのイメージです。賞味期限が短く要冷蔵、どのお店のものもパックが大きめなので、みんなでシェアして食べるといいですね。
「和菓子処 湖月堂」さんの丁稚ようかんは、北海道産の小豆を主原料に、本葛、黒糖、隠し味を使い、昔ながらの製法で手作りされています。口当たり滑らかで甘さ控えめ、素朴な風味が特長です。一番小さな500円の丁稚ようかんでも、手のひらに収まらないこの大きさ。
・丁稚ようかん ¥500~
合名会社湖月堂
0595-21-0880
09:00~18:00
毎週木曜日
養肝漬 宮崎屋
忍者の携帯食や、戦で士気を高める「肝っ玉を養う」常備食として伝わる養肝漬の宮崎屋さん。養肝漬は、瓜の中に、みじん切りにされた生姜や大根などが詰められた漬物です。お茶漬けなどに最高!1年ものと2年もの両方をお土産に買って、どちらが好みか味比べするのもいいですね。
養肝漬 宮崎屋
0595-21-5544
9:00~18:00(12月31日は正午まで)
毎月第2第3木曜日(8月と12月を除く)
1月1日
6台(無料)
伊賀鉄道上野市駅より徒歩約5分
名阪国道「上野IC」より上野市街方面へ約5分
花咲かりん
色とりどりの大輪の花が咲く店内。いえいえ、これは華やかなお菓子です。ギフトにぴったりなこの見た目、ネット通販でも見たことがある方もいらっしゃるでしょう。お花の形のかりんとう「花咲かりん」は、伊賀で作られているんです!
花咲かりんに使われるのは、伊賀米の米粉や三重県産の小麦粉など、体にやさしいこだわりの材料。職人の手で、一枚一枚丁寧に揚げられているそうです。サクサクの食感に、国産野菜の甘味や厳選の塩味。着色料や香料は不使用です。
食べるのがもったいない美しさですが、一度食べたら忘れられない!老舗のお菓子屋さんに負けず劣らずの新しいお菓子です。平日はカフェも営業しています。
名称 花咲かりん
住所 三重県伊賀市上野中町2993
電話番号 0595-22-0707
営業時間 月曜~金曜10:00~18:00/土曜9:00~17:00(物販のみ)
カフェ営業時間 10:00~15:00(LO.14:00)
定休日 日曜
組子の行灯、完成!
伊賀の商店街の中には、馬場さんの行灯作品に店名が入るお店もあり素敵でした。約1時間の伊賀まち歩きを終え、赤井家住宅土蔵へ戻ります。マスキングテープを取って、組子の行灯「木漏れ灯」の完成です!
ライトの上に置いて部屋が暗くなれば、網目の隙間から木漏れ日のように幻想的な光が溢れだします。お家に飾るのが楽しみです♪
最後に、作品を入れる箱へと、馬場さんがサインしてくれました。組子の体験で匠の技に触れ、伊賀のまちを散策して歴史と人情に魅せられ…。充実した一日の締めくくりに贈られたこの言葉には、【日本の伝統工芸が幾久しく後世に残っていきますように】といった馬場さんの想いが重ねられているのかもしれません。
「馬場建具店」組子の行灯づくり体験申込方法
集合時間 9:30~、13:30~
集合場所 赤井家住宅(三重県伊賀市上野忍町2491-1)
所要時間 約1時間30分
料金 1人19,800円~
電話番号 090-8862-3324
メールアドレス takuminoyakata1234@yahoo.co.jp
ワークショップは午前の部がおすすめ
馬場さんのワークショップは、9:30からスタートする午前の部と、13:30からの午後の部がありますが、馬場さんのおすすめは午前の部への参加です。なぜなら…
田楽座 わかや
馬場さんの午後の予定が空いていれば、ワークショップ終了後にランチをご一緒いただけたり、引き続き伊賀のまちをご案内いただけたりするからです!
伊賀を熟知する馬場さんにどんなものが食べたいか相談すると、おいしいお店をピックアップしてくれます。この日は、馬場さんの一押し、伊賀名物「豆腐でんがく」の老舗店「わかや」さんへ。
でんがくが炭火で焼かれる様子を、ライブキッチンのように見ることができます。特製みその香りに、食欲がそそられる!
思わず写真を撮りたくなる焼きたてのでんがくが席に届きました。箱には、お豆腐が16本!わかやさんに初めて来た私とさんぺいさん…串に刺さったでんがくをどうやって食べるのか迷っていると、すかさず馬場さんがレクチャーしてくれました。熱々ご飯の上に串のまま置き、箸ですーっと抜いていく。そしてご飯と共にかき込む!食べたことがないほどおいしいお豆腐と、ご飯によく合う香ばしい甘辛い秘伝のみそ、感動すること間違いなしですよ。
お豆腐の数からボリューム満点に見えますが、女性でもぺろりといけちゃいます。「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」にも掲載されたわかやさん。200年以上伊賀で愛される名店の味をぜひ堪能してください。
お店の看板やでんがくの箱に書かれている「わかや」の文字は、伊賀市で育った書家の榊莫山先生によるものだと馬場さんが教えてくれました。
・Aセット(とうふ田楽、野菜の煮物、おからの炊いたん、ごはん、お吸い物) ¥1,800
・Bセット(とうふ田楽、ごはん、お吸い物) ¥1,200
わかやの女将、吉増千英子さんにも入ってもらい、お店の前で忍者ポーズ!また一つ、伊賀の素敵な思い出が増えました。
田楽座 わかや
0595-21-4068
11時~14時、17時~20時(売切れ次第終了)
月曜(祝・祭日は営業、翌日休業)
有り・20台(無料)
伊賀鉄道西大手駅すぐそば
名阪国道 上野ICから約5分
上野東ICから約5分
旧小田小学校本館
馬場さんにお礼を告げた後、さらに伊賀の名所散策へ。伊賀上野城のすぐそばに、大正ロマンを感じられる観光スポットがあるのをご存知でしょうか。三重県指定文化財、現存する県下最古の旧校舎「旧小田小学校」です。伊賀の教育の歴史が学べるほか、当時の雰囲気を再現した教室、レトロなステンドグラスの窓、昔懐かしい遊びなどを楽しむことができます。写真撮影もOK。
旧小田小学校本館
0595-21-9957
一般:300円(20名以上の団体:200円)
小学生以上 高校生以下:100円(20名以上の団体:60円)
【障がい者入館料】大人・学生・生徒・児童ともに無料
9:00~16:30
毎週火曜日(祝日を除く)
年末年始(12月29日~1月3日)
あり
・伊賀鉄道「西大手駅」から徒歩で約10分
・名阪国道「中瀬IC」から約5分
「馬場建具店」匠の技に触れる体験を
有名雑貨店とのコラボイベントや、東京日本橋にあるアンテナショップ「三重テラス」で開かれた馬場さんのワークショップには、参加枠の何倍もの人が殺到するほど人気だったそうです。そんな馬場さんのお膝元、伊賀で体験に参加すれば、特別なまち歩きまでセットで付いてきます。
最後に、馬場さんが案内中にぽろっとこぼしていた夢をお伝えします。「伊賀をさらに古い街並みにしていきたい。外側を格子にするだけで、レトロで素敵になる。観光客が写真を撮って伊賀を広めてくれれば、今よりもっと活気あふれるまちになるはず」。馬場さんは今日も、匠の技を全国に発信しながら、愛するまち伊賀の将来も見据えています。
「みえのイマココ旅」とは?
『三重の「イマしかない」「ココしかない」体験を楽しみに三重を訪れよう』をコンセプトに、新しい旅のカタチを提案する「みえのイマココ旅」。自然、歴史・文化、伝統、ものづくり、食、ナイト&モーニング、サスティナブルをテーマにこれまでにない体験をご提供します。