諸戸氏庭園と九華公園を散策して花菖蒲・青もみじを満喫。江戸・明治の賓客になった気分で、初夏の風情を楽しんできました!【取材日:2018年6月】

掲載日:2018.06.06

6月は花菖蒲(はなしょうぶ)の季節。三重県の城下町・桑名市にある「諸戸氏(もろとし)庭園」では、花菖蒲の季節に合わせて庭園を一般公開しています。歴史の賓客達も訪れた茶室や、青もみじも楽しめますよ。桑名城跡の「九華公園」に咲く花菖蒲や株分けイベントも合わせてご紹介します。

6月初旬から見頃を迎える花菖蒲を楽しもうと、歴史が息づく城下町・桑名を訪れました!【取材日:2018年6月】

まずは春と秋の年2回一般開放している「諸戸氏(もろとし)庭園」へ。
ここは江戸時代の豪商・山田彦左衛門(やまだひこざえもん)氏を経て、明治時代に初代諸戸清六(もろとせいろく)氏に渡りました。山田氏も諸戸氏も、大切な客人をもてなす特別な場として活用していたそうです。現在施設は(公財)諸戸財団が管理・運営しています。

※2019年の春の一般公開は2019年4月27日(土)~2019年6月16日(日) (予定)

「諸戸氏庭園」入口の目印は、レンガ造りの3つの蔵。
道を挟んだ先には、水路がありました。昔は上流地域で生産された材木や米が川を伝って運ばれ、ここで集積されていたとか。
この蔵は米の貯蔵庫でした。戦前まで5つの蔵が連なっていましたが、うち2つは戦災で失われたそうです。

入園料を支払い中へ入ると、鮮やかな青もみじと苔むした一面の緑が目に飛び込んできました。
美しい景色に、まるで自分も賓客になったような気持ちに。

ガイドさんは「京都の大原三千院にも匹敵するような美しさでしょう?」と胸を張ります。その言葉に、思わず深く頷いてしまいました。

順路に沿って進むと、まずは茶室「藤茶屋」へ着きました。江戸時代には伊勢桑名藩の藩主・松平のお殿様もお茶を楽しみに訪れたという逸話も。
その話を裏付けるように、頭を高くしたまま入室できる入口“貴人口”が備わっていました。

茶室の外には、花菖蒲が一面に咲き誇っていました。この庭園と茶室は、初代清六氏の次男、精太氏が彼好みに誂えたと伝えられているそうです。
庭園内には120の島が作られ、20種余りの花が咲き誇ります。花菖蒲の数は約8,000株とも言われていますが、庭師さんでも数え切れないそうですよ。

花菖蒲と聞いて思い浮かぶのは紫色の花。この庭園内には、紫色の花菖蒲のほか、斑入りや白い花菖蒲、そしてクリーム色の花菖蒲も見られました。
この花は「愛知輝(アイチノカガヤキ)」という品種だそうです。

今度は御殿広間(国重要文化財)の前へ。広間に招かれた明治の賓客達と、同じ景色を楽しめます。

大隈重信など、歴史の授業でおなじみの政治家も訪れたそうですよ。この日は整備のため水を抜かれていましたが、水を張ると琵琶湖の風景を織りなすそうです。

御殿広間を含む文化財のいくつかは現在、100年に一度の大改修中。

以前の姿はガイドさんが資料で示してくれました。工事完了は平成34年(2022年)の予定。完成が楽しみですね。

庭園は、どこを切ってもフォトジェニック。
それもそのはず、当時はもっと多くの茶室が庭園内に築かれており、どの茶室からでも美しく見えるよう造られているから。

現存する建物「推敲亭(すいこうてい)」や「伴松軒(ばんしょうけん)」からの風景も見ものです。銘木、銘石も合わせて楽しんでみては。

青もみじも色鮮やかでしたよ。「諸戸氏庭園」の一般公開は年に2回。次は紅葉の季節に再び公開されます。

石畳に真っ赤なトンネルが出現するそうです。こちらも楽しみです。

今回庭園を案内してくれたのは、観光ボランティア「桑名歴史案内人の会」の加藤敏雄さんでした。

観光ガイドは、希望日の1週間前までに桑名市物産観光案内所へ申し込んでおくと対応してくれます。
加藤さんは大の「諸戸氏庭園」ファン。「天気や太陽の向きが変わると、庭園はまた違う表情を見せてくれますよ。何度でも訪れて下さいね」。

【諸戸氏庭園】
住所 三重県桑名市太一丸18番地
電話番号 0594-25-1004

◎春・秋のみ公開(2019年春の公開は4月27日(土)から6月16日(日)までの予定)
見学時間 10:00〜17:00(入園は閉園1時間前まで)
見学料 大人500円、小学生以下200円、3歳以下は無料
休園日 月曜日(祝日の場合は翌日)
公式サイトはこちら

【桑名市観光ボランティア「桑名歴史案内人の会」】
受付場所 桑名市物産観光案内所
住所 桑名市桑栄町2番地(桑栄メイト1階)
電話番号 0594-21-5416利用料 
案内無料(交通費・見学料は利用者負担)
公式サイトはこちら

花菖蒲を楽しむ旅は、まだまだ続きますよ。今度は桑名城へ向かって歩きます。

道中には「七里の渡跡」が見えました。江戸方面から伊勢詣でをする際は、熱田から海を渡り、ここに船が着いていたとか。現在は散歩中の人や親子連れ、サイクリストなどが行き交っていました。

桑名城の前には、大きな本多忠勝(ほんだただかつ)像が。歴史ファンには、すっかりおなじみの存在ですね。
関ヶ原の合戦の後、徳川四天王の一人である本多忠勝が桑名に入り、桑名城下町の整備を行ったと伝えられています。

お濠沿いに歩いて、城内へと入ります。残念ながら桑名城は廃城となり天守閣は現存しませんが、本丸跡と二の丸跡が「九華公園(きゅうかこうえん)」として、市民憩いの場になっています。

広さは約7.20haもあるそう。現在は桜の名所としても有名ですね。

公園内に点在する「菖蒲園」の案内看板を頼りに歩いていると、花菖蒲が咲いた一角が現れました。
ここが公園内にある菖蒲園のうちの一つです。合わせて約4,000株が咲き誇っているそうです。

九華公園の花菖蒲は、品種ごとに整然と並んで咲いていました。咲き姿の違いを見比べながら、さまざまな花菖蒲の品種を楽しむことができました。

菖蒲園のまわりには、あちこちにベンチが設置されていました。少し歩くと木陰に囲まれた東屋も発見。これなら梅雨晴れの日差しが強い日でも、涼やかに過ごせそうです。

もう一つの菖蒲園はお濠にせり出すようにありました。
公園の管理職員さんに話しかけてみると「そやねー、もう一つの区画の方が今は綺麗に咲いとるよ」という耳寄り情報も。
同じような生育環境に見えても、日当たりなどが異なるのでしょうね。

九華公園の花菖蒲を広く配布する会が、毎年開催されていました。
平成30年度の配布会開催日は6月29日(金)・30日(土)9:00〜、なくなり次第終了。
桑名市役所屋外スペースで催されます。2日間で約5種類、約2,500株が配られるそうですよ。

お濠の外は城下町らしい風情が漂っていました。立ち並ぶ家々や店舗の軒先には、季節の花咲く植木鉢でいっぱい。
歴史ある町らしい、旅人へおもてなしの心を感じられました。花菖蒲が咲く6月は、気持ち良く町歩きを楽しめる季節。
梅雨入り前に、もしくは梅雨の中休みを狙って、ぜひ訪れてみてくださいね。

【九華公園】
住所 桑名市吉之丸5番地の1
電話番号 0594-21-5416(桑名市物産観光案内所)
入場料 無料(駐車場は普通車1日200円)
休園日 無休

九華公園「花菖蒲まつり」
※2019年は6月1日(土) ~6月15日(土)実施予定
※期間外でも菖蒲園の見学は自由


※取材日:2018年6月

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