【美し国・三重 自転車道中記:伊賀編】起伏に富んだ山里でヒルクライムとグルメ三昧

掲載日:2020.01.10

三重県西部に位置する伊賀市は、周囲を山に囲まれた伊賀盆地にあり、起伏に富んだ地形と豊かな自然がサイクリストには魅力的な場所。伊賀東部にある大山田温泉さるびのを拠点にすれば、伊賀はもちろん、亀山・関方面や津の山間部にもアクセスしやすく、魅力的なサイクリングコースがいくつも引けます。
今回は、さるびのを拠点に伊賀北東部をぐるっと回る走りごたえ満点、グルメスポットと見どころもいっぱい、最後に温泉でさっぱりできるぜいたくなコースを紹介します!

三重県西部に位置する伊賀市は、周囲を山に囲まれた伊賀盆地にあり、起伏に富んだ地形と豊かな自然がサイクリストには魅力的な場所。
伊賀東部にある大山田温泉さるびのを拠点にすれば、伊賀はもちろん、亀山・関方面や津の山間部にもアクセスしやすく、魅力的なサイクリングコースがいくつも引けます。
今回は、さるびのを拠点に伊賀北東部をぐるっと回る走りごたえ満点、グルメスポットと見どころもいっぱい、最後に温泉でさっぱりできるぜいたくなコースを紹介します!

コース:伊賀市内
走行距離:52.8km
難易度:★★★★☆

■旅人 自転車ライター・浅野真則
自転車歴およそ20年。三度の飯+おやつと同じぐらい自転車が好き。自転車を愛するあまり、フリーの自転車ライターに転身。仕事と称して自転車に乗り、プライベートでもレースやロングライドを楽しむ。
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「美し国・三重 自転車道中記」とは?三重県生まれ三重県育ちの自転車ライター・浅野真則が、三重県の魅力を自転車で巡りながら紹介します!
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いにしえの宿場町と古刹を回り、蝙蝠峠(こうもりとうげ)と加太越(かぶとごえ)に挑む
伊賀というと伊賀上野の城下町や松尾芭蕉ゆかりの場所、忍者屋敷などがおなじみの観光スポットですが、今回はいわゆる定番スポットはほとんど登場しません。
それでもこのコースを紹介したいと思うのは、地元の人さえ「ここは何もない」というような観光の定番スポットでないところでもサイクリストにとっては魅力的な場所があること、そしてこのコースこそがまさにそうだと確信しているからです。

今回は伊賀の国・大山田温泉さるびのを拠点に伊賀北東部を巡ります。さるびのには駐車場もたくさんあるので、サイクリングの前後に温泉やレストランを利用すれば、サイクリング中クルマを駐車しておいてもいいそうです(大人数で来る場合は数人で乗り合わせるなど配慮を)。

今日は僕一人でコースを案内します。さるびの自慢の温泉ととっておきのグルメは最後のお楽しみにとっておいて、まずはサイクリングに出かけましょう!

子延(ねのび)の集落と平松宿
今回はスタート直後からコース屈指の峠が現れるので、まずはさるびののある子延周辺を散歩がてらウォーミングアップしましょう。

さるびのから県道668号を南下し、最初のT字路を右に曲がると、右手に水車小屋が現れます。このあたりでは、昔から水車による米つきが行われていたそうで、この水車は地元のボランティアが往事の姿を再現したものだそうです。

牧歌的な山里の風景とマッチしていて、なんとも写真映えしますね。

水車小屋の前の道を左折し、さらに南下すると歴史を感じさせる石の欄干を備えた短い橋が現れます。
これが子延橋です。橋を渡ると伊賀街道の平松宿です。

平松宿は、近くにあった上阿波(かみあわ)宿が江戸初期に3年連続で大火に見舞われたために1697年にこの地に移転したもので、かつては伊賀街道でも有数の規模を誇る宿場だったとか。今も連子格子のある昔ながらの民家がわずかに残っており、当時の面影を偲ばせます。

新大仏寺
平松宿から田んぼの中の路地を西に進むと、右手に新大仏寺が見えてきます。立派な大門が目印です。

新大仏寺は、東大寺を再建した俊乗坊重源上人(しゅんじょうぼうちょうげんしょうにん)が東大寺の伊賀別院として鎌倉時代に創建した古刹。本尊として祀られている高さ約5メートルの木彫大仏は、快慶によって作られたもので、重要文化財に指定されています。

境内には文化財の大仏殿をはじめ11ものお堂や建築物があり、境内には俳人・松尾芭蕉が訪れた際に詠んだ「丈六に陽炎高し石の上」の句が刻まれた句碑もあります。

新大仏寺は花の名所としても知られ、春から夏にかけては椿や桜、あじさい、ナツツバキ、秋には天然記念物の秋明菊や紅葉などが楽しめます。

写真は紅葉の時期に撮ったものです。本当に見事ですね。また花の季節にゆっくりと訪れたいものです。

名称

新大仏寺

住所
〒518-1417 伊賀市富永1238
電話番号

0595-48-0211

料金

大仏様などを収蔵した宝蔵庫の拝観料(ご案内付き)
300円/お一人

営業時間

午前9時 ~ 午後4時

駐車場

あり

公共交通機関でのアクセス

JR関西本線「新堂駅」から車で約35分

車でのアクセス

伊勢自動車道「津IC」から車で西へ約40分

蝙蝠峠(こうもりとうげ)
新大仏寺をあとにし、いよいよこのコースの最初の難関・蝙蝠峠に挑みます!

蝙蝠峠は、伊賀市と亀山市をつなぐ県道668号にある峠。今回上る伊賀市側は、亀山市側と比べると比較的勾配がゆるく、上りやすいです。とはいえ、ピークまでは4.5kmほど、平均勾配も7%弱ありますし、まだまだ先は長いので、上りが苦手な方はなるべく軽いギヤを選んでスピードは気にせず、クルクル脚を回しながらのんびり行きましょう。

左手に「伊賀の国」のモニュメントが見えてきたらピークはすぐそこです。ピークを過ぎると名阪国道の南在家インター付近まで爽快な下りが待っていますが、急カーブも多く、北側斜面なので冬の間は路面凍結の恐れもあります。スピードの出し過ぎには注意しましょう!

加太越(かぶとごえ)
南在家インターを過ぎたら、加太の集落を抜けて板屋インターの近くまで行き、国道25号で加太越をへて再び伊賀に入ります。国道25号は旧大和街道と自動車専用の名阪国道が並行するように走っていますが、自転車は旧大和街道を通ります。

加太越のピークまで3kmほど緩斜面が続きます。上りはじめから1kmほど進むと、目の前に石積みのアーチとレンガ造りの壁面からなる大和街道架道橋が現れます。

大和街道をまたぐように作られた関西(かんせい)鉄道(現JR関西線)の陸橋で、明治23年に完成しました。長さ4.5m、幅15.1mあり、このあたりの跨道橋では最大規模だそうです。

大和街道跨道橋を過ぎると、加太越に向かうまでに採石場があります。かつては未舗装の区間もありましたが、今は全域舗装されています。とはいえ、大型車が頻繁に通り、所々砂利が浮いているので気をつけて走りましょう。

加太越を過ぎてしばらく道なりに進むと、左手に鴉山池(からすやまいけ)が見えてきます。このあたりはJR関西線も国道の間近を走るので、タイミングがよければ列車とすれ違えるかもしれません。

芭蕉のふるさとを抜け、工場直営のパン屋で焼きたてパンに舌鼓!
トルタロッソ製パン
伊賀インターを過ぎると、国道25号は柘植の集落を通ります。柘植には俳人・松尾芭蕉の生誕地があり、細い路地沿いの空き地にひっそりと石碑が建っています。写真では紹介しませんが、今回のルートデータでは芭蕉の生誕地も立ち寄るコースをアップしていますので、ぜひ立ち寄ってください。

芭蕉の生誕地がある上柘植からさらに西進し、下柘植の信号交差点で右折。県道133号を道なりに3kmほど進むと左手にキッチンカーが目印のトルタロッソ製パンが現れます。
ちょうど小腹も空いてきたので、立ち寄りましょう。

トルタロッソ製パンは、大阪の有名ホテルなどに卸すパンを製造するパン工場で、かつては大阪にあったとのこと。
よりよい環境を求め、空気と水がきれいな伊賀に移転。かつて酒蔵だったところに工場を建て、できたてのおいしいパンをより多くの方に食べていただきたいと移転を機に直売所を設けたそうです。その確かな品質とお値打ちな価格が口コミで評判を呼び、県外からお客様がやってくるほどの人気店です。

人気のベーカリーというと、サイクリストには店内に入るのに気が引けるお店も少なくありませんが、このお店はキッチンカーの近くの目立つところにサイクルラックが置かれていて、サイクリストを歓迎してくれているのが伝わってきてうれしいです!

バイクラックに自転車を架け、店舗正面の階段を上ってさっそく店内へ。
ドアを開けると、商品棚に焼きたてのパンがずらり。ざっと見ただけでも100種類以上並んでいます!

1日50本限定の高級食パンをはじめ、食事としてガッツリお腹を満たせそうな総菜パン、スイーツとして食べられる甘いパンもあって、どれもおいしそう!
しかも多くの総菜パンやスイーツ系のパンが130円~200円程度とかなりお値打ちな価格で売られています。
うーん、これは何を選ぼうか本気で悩んでしまいます。

こちらが代表取締役の高橋毅さん。何種類ぐらいのパンがあるのかうかがうと、なんと180種類ぐらいとのこと! おすすめをうかがうと、少し困った様子で次のように答えてくださいました。

「どのパンも材料にこだわって一つひとつ愛情を込めて作っていますから、自分の子どものように愛着がありますし、どれかを選べと言われると難しいですね……。だからどれもおすすめです(笑)。
ちなみに抹茶メロンパンは伊賀産の抹茶を使ってますし、全粒粉エピに使われているロースハムもかなり高級な材料を使っています。さらにフランスパンも外がかりっとして中がふわっとした食感になるようにしています」

なるほど、これは何度も通って全メニューを制覇するのがよさそうですね!

迷いに迷って、今回は抹茶メロンパン(130円)と全粒粉のエピ(200円)を選びました。さらにハンドピックで厳選したコーヒー豆を自家焙煎した古山珈琲(ふるやまコーヒー・200円)もいただきます。

売り場の外にテラス席があってイートインすることもできますし、キッチンカーに腰掛けて食べてもいいそうです。この日は天気もよかったので、キッチンカーに腰掛けて屋外でいただくことにしました!

抹茶メロンパンはクッキー生地がさくっとしていて中はふわふわ。抹茶の香りとほろ苦さがいいアクセントになっていました。
全粒粉のエピは、高級ロースハムとクリームチーズの塩気が後を引くおいしさ。ちぎって食べられるので、携帯食にもおすすめです。
さらにコーヒーは香り高くて苦みと酸味のバランスもよく、温かいときはもちろん、冷めてもおいしかったのが印象的でした!

伊賀コリドールロード
おいしいパンに舌鼓を打ち、高橋さんともいろいろ話し込んでしまってついついトルタロッソに長居してしまいました。まだまだ今回のコースも半ばにさしかかったところなので先を急ぎましょう。

県道133号から県道673号に入り、しばらく道なりに進んで県道50号、県道4号と進みます。県道50号や県道4号は、伊賀と名張エリアをつなぐ広域農道・伊賀コリドールロードの一部をなしています。

今回通る県道4号は、名阪国道の上柘植インターより南側は断続的に急勾配のアップダウンを繰り返します。一つひとつの上りはそれほど長くはありませんが、なかなか勾配がきついので、軽めのギヤで脚をクルクル回すようにしてマイペースでやり過ごしましょう。

滝山渓谷で急登と滝を満喫! さるびの温泉と伊賀のグルメでシメ!
滝山渓谷
県道4号をしばらく進んでいくと、左手に「白藤の滝」と書かれた看板が見えます。ここを左折すると滝川沿いに白藤の滝、二位の滝、三寶(さんぽう)の滝という3つの滝がおよそ500m間隔で並ぶ滝山渓谷への上りです。

最初に現れる白藤の滝までは、上り口から2kmほど。しばらくは緩やかな上りですが、勾配が次第にきつくなってきます。勾配がきつくなり始めると左手に白藤の滝の看板が現れました。

林道からはわずかにしか滝が見えませんが、滝の近くまで遊歩道で歩いて行けます。他の2つの滝にも遊歩道があって近くまで行けます。ただし急な石段や岩場もあり、ロードバイク用のシューズでは滑りやすいので、滝の近くまで行きたい方はベアフットシューズのような軽量でコンパクトにできるシューズを携行することをおすすめします。

白藤の滝の落差15mほどあり、3つの滝の中では一番見事でした。このあたりは紅葉の名所でもあるので、秋には紅葉と滝が織りなす絶景を楽しむこともできそうです。

白藤の滝に別れを告げ、さらに林道を上っていきます。三寶の滝を過ぎると、道が少し狭くなり、勾配がいっそうきつくなります。

ピーク手前の田代湖付近の勾配はなんと14%!
7%でも結構な勾配ですから、14%はなかなかお目にかかれない急勾配といっても過言ではありません。脚に覚えのある方も満足できるはずです。もし上りに自信のない方は、できるだけ軽いギヤを装着して挑戦されることをおすすめします。

伊賀の国・大山田温泉さるびの
田代湖を過ぎるといったん下ってもう一度短い上りがあります。これをクリアしたら上りはほぼ終わり。下りの急カーブが続く林道を道なりに進むと、最初に通った蝙蝠峠への上りの途中に合流します。
ここまできたら、あとは伊賀の国・大山田温泉さるびのに向けて下るのみです。
ペダルをこがなくてもぐんぐんスピードが出る爽快感は、自分の足で上ったサイクリストだけが味わえるごほうび。スピードの出し過ぎにはくれぐれも注意しましょう!

スタート地点のさるびのに戻ってきました!
今回ここを拠点にしたのは、駐車場があるのもさることながら、温泉とレストランを備えていて、サイクリングのシメにピッタリだからです。

まずは温泉で疲れを癒しましょう。
大山田温泉は無色透明のナトリウム 炭酸水素塩・塩化物温泉で、筋肉痛や関節痛への効能が期待でき、シメの温泉として申し分ありません!
源泉掛け流し風呂のほか、石造りと木造りの大浴場・露天風呂(1日ごとに男女入れ替え制)もあります。

温泉で汗を流してさっぱりしたら、お腹が空いてきました。館内のレストラン「くれは」で地元のおいしいものをいただきましょう!

メニューを見ると伊賀牛を強力にプッシュしているのが分かります。
施設の方によると、伊賀牛は肉質が柔らかく、脂に甘みがあるのが特徴で、生産量が少なく、伊賀周辺の限られた地域でしか味わえない貴重なブランド牛なのだとか。
すき焼きと焼き肉、スタミナ丼、ハンバーグの定食がありましたが、今回は伊賀牛すき焼き定食(1700円)をいただくことにします!

お待ちかねの伊賀牛すきやき定食が運ばれてきました!
すき焼きに入っている野菜も伊賀産のもので、中でもクレソンはさるびので採れたものを使っているそうです。

すきやきに火を入れてもらい、鍋がグツグツ煮えるのを待つ時間もたまりませんが、ほどよく火の通った伊賀牛を口にしたときの幸福感は格別です。甘辛い割下と肉の脂の甘みとうまみが相まって、「おいしい」の一言ではとうてい表現しきれない美味でした。
このおいしさは、伊賀をサイクリングで堪能したことによるほどよい疲労感と充実感がスパイスになっていることはいうまでもありません。

伊賀の北東部は、個人的にもよく走るコースのひとつではありましたが、今回のサイクリングを通じて今まで知らなかった新しい魅力を発見することができました。
三重県にはまだまだ知らない道も魅力的な場所もその土地でしか食べられないグルメもあるはずです。さて、次はどこに行こうかな。
名称

伊賀の国大山田温泉さるびの

住所
〒518-1412 伊賀市上阿波2953
電話番号

0595ー48ー0268

営業時間

10:00~21:00(入浴最終受付20:30)

休日

火曜(祝日の場合営業)

駐車場

180台

公共交通機関でのアクセス

伊賀鉄道上野市駅から三交バス「汁付」行きバス42分「子延口」下車徒歩10分

車でのアクセス

■大阪→西名阪自動車道→名阪国道(中瀬lC)→国道163→さるびの ※中瀬ICから25分
■京都→国道24→国道163→さるびの
■名古屋→東名阪自動車道→名阪国道(中在家lC)→県道668→さるびの ※南在家ICから15分
*いずれも、所要時間は約1時間30分です

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