弘法大師の師匠、勤操大徳が開かれたお寺。丹生大師として親しまれている丹生山神宮寺とその周辺スポットをご紹介します。

掲載日:2021.06.29

「神宮寺って神社とお寺どっちなの?」「丹生って?大師って何?」そんな声に先ずはお答えします。結論を先に書いてしまうと、神宮寺は「お寺」なんです!でも神社ともとても深い関係にあるのです。また、丹生とは「丹(に)を生む」と言う意味で、そして丹とは「水銀」の事、水銀の産地として栄えたことから地名にまでなっています。
大師とはもちろん「弘法大師 空海」の事で、丹生にお祀りされている弘法大師、つまり丹生のお大師様と言う事で丹生大師(にうだいし)と呼ばれ親しまれています。そんな丹生大師 神宮寺と1日で巡る事の出来る周辺スポットと併せてご紹介します。

◆記事作成:MAMMY(マミー) 
僧侶と写真家、二足の草鞋を履く僧侶フォトグラファー
鈴鹿市在住 カメラ歴:Nikon一筋13年
最近、ミラーレス機が気になって仕方がありません…。(涙)


丹生大師(丹生山神宮寺)

弘法大師(左)と勤操大徳(ごんそうだいとく)(右)

多気郡多気町丹生に在る、生大師として親しまれている丹生山神宮寺。宝亀5年(774年)に弘法大師の師匠である勤操大徳が開山され、後の弘仁4年(813年)に弘法大師が来寺された時に七堂伽藍(しちどうがらん)を整備されたという由緒あるお寺なのです。

丹生大師山門(仁王門)

勢和多気ICから車で5分程、お寺に到着すると先ず目に入るのが大きな山門(仁王門)です。令和元年に修復を終えて落慶(らっけい)されました。名前のとおり門の表側(道路側)には阿形吽形二体の仁王像が安置されており、裏側(境内側)には持国天、増長天の二天が安置されています。どれも仏教や三宝の守護神であり筋骨隆々で目つきも鋭く、正にお寺を守護しておられます。

さて、これより丹生大師の境内(けいだい)を順にご案内します。

※落慶とは、お寺や神社の建築物が完成、修復が完了すること。その記念式典を落慶法要と言います。

池に広がる白睡蓮

白睡蓮とモノサシトンボ

先ずは、山門を潜り抜けると参道が奥まで真っ直ぐに伸びています。その右側には大きな池があり、水面には白の睡蓮がたくさん咲いています。参拝される方は勿論、お散歩のルートになっていたり、ここの睡蓮を観に来る方、撮影される方で池の周りはいつも賑わっています。睡蓮は5月中旬〜8月上旬が見頃のようで、鑑賞される時は午前中の方がしっかりと開花しているのでオススメです。

睡蓮と蓮の見分け方を副住職さまに教えて頂きました。睡蓮は水面近くに咲き、葉は光沢があって切れ目があるそうです。蓮はと言うと茎が伸びて水面より高い位置で咲き、葉は光沢の無い円形だそうですよ。

参道左には客殿が見えます。客殿の一角に寺務所がありますが寺務所とはお寺の受付、御朱印や御守り等を授与する所になります。この客殿は寛永年間(1624年頃)に建てられたもので、見るからに立派です。玄関も素晴らしく、この建物は密教寺院の客殿の伝統様式を忠実に踏襲(とうしゅう)されている様です。確かに高野山真言宗の本山、金剛峯寺もこれと同じ様な形になっていますね。

更に参道を進むと右手に白壁の蔵の様な建物があります。こちらが閻魔堂です

格子から中を覗くと、地獄の裁判官である閻魔様を含む十王(じゅうおう)閻魔様をサポートする司命・司録(しみょう・しろく)三途の河の奪衣婆(だつえば)人頭杖(にんずじょう)赤鬼、青鬼が勢揃い。

この写真は中から撮らせて頂きましたが、格子から薄暗いお堂の中にこれらの像が見えると少々不気味かもしれませんね…。

閻魔様単体、閻魔様を含んだ十王が安置されているのは偶に見ますが、奪衣婆や人頭杖等までもが揃っているのは全国的にみても珍しいのではないでしょうか。一見の価値有りです!

閻魔堂より振り向くと、右手前には鐘楼堂、その奥には護摩堂(不動堂)が有ります。こちらは名前の通り不動明王をお祀りして護摩(ごま)と言う、炉に火を焼(く)べて祈祷を修法(しゅほう)するためのお堂です。

次に、広場にある大きなお堂が丹生大師の本堂にあたる観音堂、その隣にある少し小さなお堂が薬師堂です。

観音堂(本堂)内陣。立派なお堂なのは一目瞭然ですが、内陣の天井を見れば更にその凄さに気がつきます。

天井にも様々な様式や格式が有り、壁の上で湾曲した木材で天井を持ち上げる様式を「折上格天井(おりあげごうてんじょう)」、更にもう一段高くしたものを「二重折上格天井」と言います。更に小組(こぐみ)と言う格天井の四角の中を更に孔子模様を装飾したものを「二重折上小組格天井」と言い、正に最上級の造りなのです

天井ひとつ観ても、こういった格式など様々な意味合いがあるので、この様な細かい部分にも目を向けてみると参拝がより楽しくなりますね。

観音堂の側面には、西国三十三観音のお厨子があります。その大きなお厨子の中には、三十三体の観音様がズラリと並んでいます。

観音さまと言っても、立っていたり座っていたりと色々なお姿をされていますね。

その横には、六地蔵堂と刻まれた石柱に上部は木材で作られた檜皮葺きの珍しい燈篭(とうろう)が有ります。ここには昔、地蔵堂があったのですが再建出来ずにいた為、その存在を知らしめる為に設置されたそうです。

また、この広場から大師堂へと続く石階段とその横にある回廊はここでしか観ることの出来ない絶景ポイントです。「丹生大師」と言えば回廊と言うぐらい有名です。春には桜に覆われて、初夏は新緑、雨の日の幽玄さも素晴らしいです。紅葉や雪景色など四季を通して撮影したくなる場所です。

この回廊は、江戸時代のお殿様や、時のお偉方がお大師様を参拝される時に雨風を凌ぎ敵から身を守る為に作られたそうです。平成29年に台風で倒壊してしまいましたが見事に再建されました。現在は参拝者の方にも利用して頂ける様に解放されているので、ぜひお殿様気分を味わってみましょう。

階段を上がると面に見えるのが大師で、ここにお大師様がお祀りされています。

この尊像は、お大師様が42歳の時に閻魔堂の横にある姿見の池でその御姿を映し、自ら刻まれたものです。

等身大に近い大きさで、そのお顔はとても優しい表情をされています。

左には文殊堂があり、中には本尊様として文殊菩薩、脇仏として普賢菩薩が安置されています。どちらの仏様も蓮華座に片足を出して座られています。蓮華座の下には、禽獣座と言って文殊様は青い獅子、普賢様は白い像がいます。この様な座り方や下に動物がいる等、馴染みの少ない仏様を間近に拝見出来るのも良いですね。

右には、稲荷社と四国八十八ヶ所霊場の石仏が並んでいます。

こちらの四国八十八ヶ所霊場の石仏も大師堂と共に平成26年に台風被害を受けましたが、御住職をはじめお寺に関わる信者や地元の方々のお陰で修復・再建されました。

大師堂の奥に進むと、目前には丹生都比売命(にうつひめのみこと)が祀られており、その前を通って更に行くと、境内の一番高い所に火伏せの神様として有名な愛宕大権現(あたごだいごんげん)がお祀りされています。

愛宕さんのすぐ手前には、丹生大師さんの伽藍(がらん)を一望出来る新スポットが有ります!

この写真は数枚を合成したものになりますがスマートフォンのパノラマ撮影を使えば簡単に撮ることが出来ますよ。一番左は丹生都比売命から右は山門を越えて集落まで。
正に絶景ポイントです!出来ればここから夕焼けを撮りたかった…。(涙)

何故ここが新スポットになったのか。それは先ほど書いた台風によって大師堂と四国八十八ヶ所霊場に大木が倒れて損傷した為、これ以上の被害を出さないよう苦渋の決断で大木を伐採した為に出来たのです。こちらにもぜひお立ち寄りください。

また、仁王門から続く参道の一番奥には鳥居が有ります。見えますか…?(汗)

そこには丹生神社が鎮座されてます。

初めにお話しした深い関係とはこの事で、神仏習合(しんぶつしゅうごう)と言って僧侶が神前でお経を読んだり祭祀(さいし)を仏式で執り行っていた時代がありました。明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)によってお寺と神社は別々になりましたが神宮寺というのは名前の通り、お寺の中でも神社と一番関係が深いお寺なのです。その関係性は現在でも切っても切れないものです。

仁王門落慶記念朱印と記念念珠

こちらは、仁王門の落慶を記念して作られた特別朱印と腕輪念珠です。念珠のサイズは大小の2種類。1722〜23年に建立された当時の木材で作られたものです。約300年前の木材ですよ?その間に丹生大師に参拝された人々を見守り続けた門の木材が自分の腕で自身を守ってくれると考えたら一段と有り難く感じますよね。

そんな丹生大師さんは現在「西国薬師四十九霊場三十五番札所」、「東海三十六不動尊霊場二十四番札所」、「三重四国八十八ヶ所七十五番札所」、「伊勢西国三十三観音霊場十二番札所」になっているので、其々の通常の御朱印も勿論あります。機会があれば是非お参り下さい!

⬇︎⬇︎次のページでは周辺スポットをご紹介しま〜す!次のページへお進みください!⬇︎⬇︎

丹生山 近長谷寺(にうざん きんちょうこくじ)

丹生大師と同じ多気町の長谷に在る丹生山金長谷寺。ナビ通りに一本道をしばらく登ると突き当たりが駐車場になっていました。丹生大師の副住職さんから「駐車場からお寺までは急な坂道を数分の間登らないと行けない」とお聞きしていたので内心不安に思っていました。入口にある趣のある鳥居が更にそう思わせます。

何度かつづら折れする坂道。写真では分かりづらいですが、本当に急勾配でした。この写真を撮る時も息が上がって何度か撮り直しました…。(汗)多気町の長谷と神坂という狭い地域に建つ普賢寺、金剛座寺と共に千年以上の歴史があり、地元の人は親しみを込めて「多気のチベット」と呼んでいるそうです。

重い機材を担いで登ること5分強、最後の石階段を上れば目の前に立派なお堂が見えてきます。正面が本堂で右奥にあるのが庫裡です。こんな山奥にこれほど立派なお堂を建てることは、現代においても大変な事は間違いないですが、当時にこの場に建立した先人の信仰心と情熱には恐れ入るばかりです。

御本尊様は国指定重要文化財にも指定されている平安後期作の十一面観世音様です。その像高はなんとっ、6.6m!その大きさに息を呑みます。こちらも一見の価値ありですが、参拝については注意が必要です。堂内を拝観できるのは毎週日曜日と御縁日の18日で時間は10〜15時までとなっています。それ以外は拝観出来ませんが御朱印は兼務されている丹生大師さんでも頂けるそうです。また堂内拝観料として200円をお納めいただいているとの事です。地元の方が交代で清掃、参拝時のお世話をしているそうです。

丹生山近長谷寺のHPはこちらをクリック!
あじさいの小径(こみち)

丹生周辺には、紫陽花が1万本もある様で至る所で見る事ができます。写真は丹生大師の山門から南に少し歩いた、あじさいの小径という所です。色とりどりの紫陽花がずらりと並んでとても綺麗です。

紫陽花と蛙。

紫陽花と蝸牛。

紫陽花と蜻蛉。

偶然にも、紫陽花の上に居るカエル、カタツムリ、トンボを発見!今までこんな写真は撮れたことが無いのでラッキーでした。

どこで覚えたのか、「紫陽花には毒があるのでカタツムリは紫陽花には居ない。」と勘違いをしていましたが、実際は「紫陽花の葉には毒素があってカタツムリは葉を食べない。」という事でした。しかし3枚とも似た様な構図…。(汗)

小さな生き物の目にピントを合わすのは大変ですが、絞りを出来るだけ解放して撮ると背景がボケて被写体が際立つので挑戦してみて下さい。保険をかけて一構図で数枚撮るか、撮った後にしっかりと確認する事をオススメします。(笑)
メダカ池

こちらは、じさいの小径の途中にあるメダカ池。真ん中には、緑の土管?があって子供達に大人気でした。池の中にはメダカだけでなく、カエルやイモリ等も気持ち良さげに泳いでいました。時期になると蛍もいるんだとか。

池には沢山のホテイアオイという水草が浮いていました。夏には紫色の花が咲くそうです。また開花時期になったら撮りに行こうと思いま〜す!

水銀坑跡

あじさいの小径を更に南に進むと看板があり、道から少し奥へ行くとある水銀採掘坑道入口その昔、東大寺の大仏建立の時に使用された水銀5万両(現在の約2トン)はここ丹生のものだそうです。中には入れませんが、入口に近づくと中から冷たい風が流れてきて…小心者の拙僧にはちょっと怖かったです(冷汗)

こちらは近くにある昭和30年代に使用されていた水銀精錬装置。
ZACK'S BAKE(ザックス ベイク)

丹生からは少し離れますが田園の中、県道701号を西に進むと右手に見えてくる一際お洒落な建物。(拙僧は見惚れながら一度通過してしまいました…。)
こちらが松阪市庄町にあるドッグランが併設されたスコーンとキッシュのお店、ZACK'S BAKEさん。イートイン、テイクアウトのどちらも可能です。

外観だけでなく店内もめちゃくちゃお洒落で、拙僧一人では場違い感が漂うほど…。妻と子供が一緒で本当に良かった。(笑)

今回は時間の都合でテイクアウトにしました。スコーンもキッシュもお家で美味しく頂きました。営業時間は10〜16時。不定休ですのでお店のインスタグラムでチェックして下さい。限定メニューもありますよー!

ZACK'S BAKEさんのInstagramはこちら!

ビーフロード

移動中、と標識を見たらビーフロードの文字が。後で調べてみると広域農道の一つでした。のどかな景色で信号も少なく、ツーリングやドライブに良さげでした。この周辺では数千頭の和牛が飼育されていて、それが元になってか、公募によって名付けられたらしいです。
コケコッコー共和国 山の駅よって亭

高速道路から見える看板にコケコッコー共和国の文字。実を言うと拙僧、昔からめちゃくちゃ気になっていました。今回は意を決しての潜入捜査です!(笑)

注文したのは平日ランチの平飼い鶏ランチ。やわらかめタレ、かための塩麹漬け、あとはTKG(卵かけご飯)用の生卵。親鳥特有の歯応えが堪らなく美味しかったです。しかも安いっ!!

敷地の奥には来訪記念と書かれたファンキーな看板を発見!皆さんも来訪の際はこちらで記念撮影を忘れずに!(笑)

コケコッコー共和国HPはこちらをクリック!

最後まで見ていただき有難うございます。どうでしたか?歴史と自然、どこか懐かしさを感じる多気町周辺。今回は行く事が出来なかった所がまだまだ沢山残っているので、これからも探索していきたいと思います。皆さんも近くに来られる事が有りましたらどうぞお立ち寄りください!

拙僧の前回までの記事は此方からどうぞ!




Page Top