新種クマノザクラの観賞ポイントは?熊野さくらの会 田尾さんと紀宝町のクマノザクラ名所をご案内

掲載日:2020.03.25

約100年ぶりに発見された新種の桜 クマノザクラ。まだあまり知られていないクマノザクラの特徴や見分け方、観賞のポイント、なぜ100年間も発見されなかったのか?という疑問まで。
三重県紀宝町で桜の植樹活動をされて18年目のNPO法人熊野さくらの会 代表の田尾友児さんにお話を伺いました。インタビュー後は、田尾さんと一緒に三重県紀宝町のクマノザクラや桜のスポットを巡っていきます。
クマノザクラのこと、満載の内容でお届けします。

約100年ぶりに発見された新種の桜「クマノザクラ」を知っていますか?

クマノザクラは紀伊半島南部の奈良県、三重県、和歌山県に分布する野生種の桜です。2018年に発見されて以降、綺麗な花をつける早咲き桜として、とても注目されています。

発見されたばかりで、まだまだ知られていないことが多い「クマノザクラ」。今回はクマノザクラのことをもっと知るために、紀宝町で桜の植樹活動をする「NPO法人 熊野さくらの会」代表の田尾友児さん(以下、田尾さん)をお訪ねしました。

熊野さくらの会での植樹活動は、今年で18年目を迎えます。

長年、桜に寄り添ってきた田尾さんへのインタビューを通して、クマノザクラの特徴や観賞のポイントをチェックしていきましょう。
そして、紀宝町のクマノザクラスポットや桜の名所を田尾さんと一緒に巡りながら、ご紹介します。

クマノザクラが100年ぶりに新種として発見されたのはなぜ?

田尾「今年もヤマザクラが綺麗やねぇ、でも早いよねぇって言いながら見とったね。種類を見分けられる人がいなくて、山にしか咲いていないからヤマザクラと思ってたんやよね。」

クマノザクラは三重県内では紀北町から南の地域にのみ、自生しています。春が訪れるたびに地元で話題にしていた桜で、「ヤマザクラが2回咲く」とも言われていたそうです。

そんな中、2018年3月に「約100年ぶり、野生種で10番目の新種としてクマノザクラが発見された」というニュースが田尾さんの耳に飛び込んできました。

田尾「18年前から熊野さくらの会の名前で活動していたので、もう僕らのために見つかった桜みたいなもんやねって冗談を言って喜びました。発見された勝木先生にも、僕らはマネしてないよって伝えてね。」

写真は2020年2月に飛雪の滝キャンプ場で実施されたクマノザクラ植樹の様子。写真の右から2番目の人物が、クマノザクラ発見者の森林総合研究所 多摩森林科学園の勝木俊雄農学博士(以下、勝木先生)です。

「クマノザクラはほとんど植栽されておらず、実際に見る機会はまだ多くありません。この春に紀宝町の浅里飛雪の滝キャンプ場に植えられたクマノザクラが、多くの人に見てもらえるようになることを期待します。」
と勝木先生より、当時を振り返りながら熊野さくらの会へのエールのコメントをいただきました。勝木先生と田尾さんは協力連携をしながら、紀宝町のクマノザクラの自生場所調査や植樹活動を進められています。

クマノザクラを見分けるポイントはここ!

「クマノザクラを見分けるポイント」を田尾さんに教えてもらいました。

クマノザクラのわかりやすい特徴としては、咲く時期がヤマザクラや染井吉野(ソメイヨシノ)よりも早く咲くこと。一般的に2月〜3月が見頃です。

続いて、見た目の特徴は以下となります。

・花弁(かべん)/花びら:白〜淡いピンク色、先端がやや濃い色のものもあります。

・花序(かじょ)/花をつけた枝:クマノザクラの花序にはふつう2個の花がつきます。

・花柄(かへい)/花序を支える枝:無毛。

実はクマノザクラはまだまだ研究段階でわかっていないことも多く、個体差もあります。
例えば、同じクマノザクラでも花びらの色が少し違うことも。クマノザクラ観賞の際は特徴を一つ一つ確認して、「これはクマノザクラかな?」という視点を持つことが大切です。

こちらは小彼岸(コヒガン)。クマノザクラと比べてみると明らかに違います。

それでは、田尾さんからクマノザクラの見分けるポイントを教えていただいた後は、紀宝町の桜の名所を巡っていきましょう。

クマノザクラスポット:子ノ泊山(ねのとまりやま)登山道入り口付近、例年の見頃は3月下旬。

標高 907メートルの紀宝町最高峰の山が「子ノ泊山」。登山道入り口や道中にはたくさんのクマノザクラスポットがあります。

中にはクマノザクラ群生スポットも。

クマノザクラの多くは山の斜面に多く自生しています。

なので、クマノザクラ観賞時には「双眼鏡」や「ズーム機能付きのカメラ」を持っていくと便利です。

クマノザクラスポット:御船島(みふねじま)付近、例年の見頃は3月中旬。

熊野速玉大社の境内の一部である紀宝町にある御船島。熊野速玉大社の例大祭「御船祭」の際には、早船競争で3度島をまわることで有名です。

三重県道740号「小船紀宝線」沿いの御船島を一望できる場所を背にして、振り返ったところにクマノザクラが自生しています。

クマノザクラスポット:さくら山への道中、例年の見頃は2月下旬。

続いては、熊野さくらの会が管理するさくら山方面へ。さくら山では約50種類の桜(エドヒガン、ヤマザクラ、オオシマザクラ、小彼岸、陽光など)が植樹されています。クマノザクラは2019年に植樹したばかりでまだ着花していない状態ですが、誰でも自由に桜を観賞できるスポットです。

御船島を一望できる場所から飛雪の滝キャンプ場方面へ約40mのところに目印看板があります。ここから、さくら山までは車で5km(約15分)です。

さくら山に向かう道中には2月下旬頃に咲く、早咲きのクマノザクラが自生してます。田尾さんが知る限りでは、三重県でもっとも早咲きのクマノザクラなのだそうです。

さくら山では広大な山々や海、町の絶景も望めます。

さくら山の桜の見頃は、種類によって異なりますが3月上旬〜4月中旬。車は空いているスペースに駐車ができます。

他にも紀宝町ではクマノザクラを、山間部を中心に見ることができます。ぜひ、「クマノザクラかな?」の視点で探してみてください。もちろん、運転中のよそ見は厳禁です。

紀宝町ではクマノザクラ以外にも、息を飲むような桜の絶景スポットがあります。例えば、飛雪の滝キャンプ場では滝と桜の景観を合わせて楽しめます。

車で桜並木をドライブできるフラワーロード。

夏は水遊びで賑わう大里親水公園では、水辺に映る桜の景色を楽しめますよ。

田尾「どんな桜にも地域で親しまれていたり、一本一本に物語があります。」

自然災害や獣害被害を乗り越えて育ってきた桜。そこには田尾さん達のように桜に寄り添い続けてきた人たちがいます。5年後には田尾さんたちが植樹したクマノザクラも花をつけます。そして、20年後には満開の花を咲かせているかもしれません。

春の訪れを一足早く知らせてくれるクマノザクラ。毎年2月〜3月頃は、紀宝町へお出かけしてみるのはいかがですか?その際は、桜を眺めながら「桜の物語」にも思いを寄せてみてください。

紀宝町のクマノザクラやさくら山の最新の開花状況は「熊野さくらの会 公式facebook」で発信されています。お出かけの際は要チェックです。

熊野さくら会公式Facebook


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【ライタープロフィール】
濱地雄一朗:三重県伊勢市在住の地域ライター。ウェブサイト「三重県お土産観光ナビ」を運営。三重県のお土産・特産や観光情報を執筆・発信しています。
https://mie-hamaji.com/
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