音声ガイドとともに歩く、新しい熊野古道伊勢路

旅先で、初めて訪れたスポットの背景を詳しく知りたくなったことや、後から見どころを通りすぎていたことに気づいて後悔した経験はありませんか? そんな後悔を残すことなく、熊野古道伊勢路の魅力を伝えてくれる音声ガイドがリリースされました。 この記事では、伊勢から参る熊野古道伊勢路ルートの中でも人気の馬越峠と松本峠、険しい道のりとして知られる八鬼山越えでの新しい旅の楽しみ方をご紹介します。 音声ガイドを活用して、「伊勢路の魅力」を身近に感じるとともに充実した熊野古道の歩みをお楽しみください。

熊野古道伊勢路とは?

熊野古道とは、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)に詣でるための道です。熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」(※)として、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
熊野古道の5つの参詣道のうち、伊勢から熊野三山に詣でるための道が「伊勢路」です。伊勢路は、江戸時代に「お伊勢参り」と「西国三十三所巡礼」が庶民の間で流行したことから盛んに歩かれるようになりました。

(※)「紀伊山地の霊場と参詣道」…「熊野三山」「吉野・大峯」「高野山」の3つの霊場と、これらを結ぶ「熊野参詣道(熊野古道)」「大峯奥駈道」「高野参詣道」、その周囲を取り巻く「文化的景観」で構成されています。

熊野古道伊勢路の中でも人気の馬越峠(まごせとうげ)と松本峠は、美しい景観や史跡など、様々なスポットを楽しみながら散策することができる初心者でもおすすめのコースです。また、八鬼山越えは西国一の難所と称されるほど険しい道で体力に自信のある方におすすめのコースです。今回は、このコースを音声ガイドで楽しむ新しい旅を提案したいと思います。

自分だけの専属ガイドで巡る、新しい旅の楽しみ方

熊野古道伊勢路の音声ガイドが聴けるアプリ「ON THE TRIP」は、「あらゆる旅先を博物館化する」をテーマに、神社やお寺などの文化財、絶景や温泉地、芸術祭、さらには禅や寿司などのカルチャーまで。様々な旅先で気になったことについて、その場で理解を深めるトラベルガイドアプリです。

音声ガイドの使い方は簡単。ダウンロードした「ON THE TRIP」アプリを立ち上げて、スポットガイドをダウンロードします。その場で自分が気になったスポットを選んで再生すると、音声とテキスト、写真付きで目の前の景色についての歴史や背景などを教えてくれます。観光スポットの見どころをGPSと連動してガイドしてくれるので、自分で調べる手間も省いてくれる頼もしい旅のお供です。

歴史の足跡に立ち止まる、馬越峠

馬越峠は紀北町と尾鷲市にまたがる峠道で、尾鷲ヒノキが連なる林の中に美しい石畳が続く、まさに熊野古道らしい雰囲気を存分に味わうことができます。

美しい石畳を楽しんだ先にある峠からは、尾鷲市内を一望することができる絶景スポットへと続くハイキングコースもあります。馬越峠のふもとには、桜やツツジの名所として有名な馬越公園や江戸時代から続く奇祭が行われる尾鷲神社もあり、古道だけではない魅力に出会える峠道です。

目の前に広がる、馬越峠の「物語」を知る

実際に馬越峠を音声ガイドとともに歩いてみましょう。スタート地点に着いたら、「ON THE TRIP」アプリを立ち上げて、馬越峠を選びます。この音声ガイドは「馬越峠の登り口」から始まります。

この峠道を歩き出して目に飛び込んでくるのは、大きくて頑丈な石畳の様子。
石畳というと、階段状のものをイメージすることが多いですが、馬越峠の石畳は段差がなく、滑らかに敷かれています。目の前の石畳たちは、なぜこのような作りになったのでしょうか?

疑問に思ったらたらすぐに、音声ガイドを確認!
GPSで今いる場所が表示されるので、近くに出てきた気になるスポットを選び、音声ガイドを再生してみましょう。音声と合わせてテキストと写真でも確認できます。または自動再生モードをONにすれば、物語のあるスポットに近づくと自動で音声ガイドが再生されますよ。

音声ガイド Chapter 03|石畳
 馬越峠の石畳道は江戸時代の初め紀州藩により整備されたもので400年前のものです。登り口から峠までの2キロの石畳道は整備された当時のままの姿で残されています。
 道幅は、偉い人を駕籠に乗せて運ぶことも考えて2.7メートルを基本としました。敷石は大きく平らで、折り重なるように敷かれています。これらの石は周辺の山や谷からの花崗岩を用いており、歩きやすいように歩幅に合わせて敷かれているためストレスなく歩くことができます。

 

なるほど。目の前の石畳は、江戸時代の頃から400年以上この姿を保っているとのこと。
「伊勢に七度、熊野に三度」という言葉があったほど、古くから祈りの道としてたくさんの巡礼者を迎えていた伊勢路。この先も続く巡礼の旅が少しでも楽になるように歩きやすさを重視した作りにしたのかもしれません。音声ガイドを聞いてから改めてこの石畳を歩いていると、駕籠を担ぐ人の息遣いや駆け抜ける足音、あこがれの熊野三山を目指し人々が思い思いのペースで歩いている様子が浮かんできます。

その他にも、馬越峠にはお地蔵さんにまつわる話や、寄り道をしてでも体験してほしいスポットなど、伊勢路をもっと深く楽しむための音声ガイドがあるので、ぜひ現地で体感してみてくださいね。

夜泣き地蔵(詳しくは…音声ガイド「馬越峠」 04|夜泣き地蔵と石橋)

この道を築いた人たちと歩く、松本峠

松本峠は、伊勢神宮から数多くの峠を越えて熊野三山の一つ熊野速玉大社に向かう最後の峠です。伸びやかな美しい竹林に囲まれた石畳の道は歩くだけで気持ち良く、標高が高くないため比較的歩きやすいことから、お子様と一緒でも安心して歩くことができます。

峠の周辺には、七里御浜と熊野三山の山並みが一望できる美しい眺めや、世界遺産に登録されている日本書紀にも記された日本最古と伝えられる神社「花の窟」や獅子が咆えているように見える巨岩「獅子巌」などに立ち寄ることができます。

七里御浜と熊野三山の山並み(詳しくは…音声ガイド「松本峠」 08|東屋から見る七里御浜と熊野灘)

獅子巌(詳しくは…音声ガイド「松本峠」 EX2|獅子巌)

目の前に広がる、松本峠の「物語」を知る

馬越峠と同様の石畳に道のりが美しい松本峠。
同じように見える石畳の古道でも、音声ガイドとともに歩き、その違いを知ることで見える景色が変わっていきます。
石畳の歴史がどのように違うのかは、ぜひ現地で体感してみてくださいね。

石畳や竹林の道のりを楽しんでいると、不意に等身大ほどの大きなお地蔵さんに出会いました。
やさしいお顔のお地蔵さんに近づいていくと、GPS連動で自動再生モードにしていたお陰で音声ガイドが自動的に再生されました。見どころを見逃すことがないので、自動再生モードにしておくことがオススメですよ。

音声ガイド Chapter 07|地蔵さんと茶屋跡
 峠には400年ほど前の江戸時代の初めころに建てられた身長170センチほどの地蔵さんが旅人を見守ってくれています。
 ところで、この地蔵さんには穴が空いています。なぜでしょうか? これは鉄砲の穴ともいわれ、こんな言い伝えがあります。
 むかしむかし、大馬新左衛門という鉄砲の名人が松本峠を越えて隣町に行った、その帰り道のこと。空はもう暗くなり、夜になっていました。新左衛門がこの場所を通りかかったとき、行きにはなかったはずの大きな影があらわれました。「妖怪だ!」新左衛門はその影を狙って鉄砲を打ちました。しかし、その影はビクともしない。おそるおそる近づいてみると、実はその影は、新左衛門が隣町に行っている間に村人たちによって運ばれて、この地に建てられた地蔵さんだったのです。

 

音声ガイドにしたがってお地蔵さんの足元を見てみると、穴が空いていることに気づきます。鉄砲によってできたといわれる小さな穴。この穴一つにこんな言い伝えがあったなんて。できたばかりのお地蔵さんを傷つけてしまった新左衛門さんは、その後、村人たちにどんな風にこのことを伝えたのでしょうか。そんなことを思いながら、このお地蔵さんの表情を眺めていると、きっと怒られながらも許してもらって笑い話となっていたのかなと想像してしまいまいました。

一見すると見逃してしまいそうな歴史や物語に気付くと、その土地がもっと身近に感じられて、旅が自分だけの思い出として変わっていくことが音声ガイドの魅力なのかもしれません。

鬼ヶ城(詳しくは…音声ガイド「松本峠」 EX1|鬼ヶ城)

祈りと試練の道を越える、八鬼山越え

八鬼山越えは、尾鷲市に位置する熊野古道伊勢路の峠道で、「西国一の難所」とも称される険しい道のりが続きます。江戸時代には巡礼者がこの峠を越えて熊野三山へと向かい、道中には巡礼墓碑や町石、供養碑などの歴史的遺構が点在しています。石畳道や七曲りの急坂は、当時の旅人の足跡を今に伝え、峠の途中にある三宝荒神堂や休憩所跡は、巡礼者が一息ついた名残をとどめています。標高が高く険しい道のりですが、頂上付近では熊野灘の美しい海岸線を望む絶景が広がります。歴史と自然が調和するこの道は、かつての巡礼者と同じ体験ができる貴重な峠道です。

八鬼山三宝荒神堂と茶屋跡(詳しくは…音声ガイド「八鬼山越え」 11|八鬼山三宝荒神堂と茶屋跡)

目の前に広がる、八鬼山越えの「物語」を知る

長々と続く石畳の道に疲れを感じ始めた頃、イヤホンから新しいガイドが流れてきました。

音声ガイド Chapter 03|七曲り
 難所といわれる八鬼山越えの中でも280メートルほど続く七曲りの急坂は一番の難所といわれています。七曲りの名前は七つのカーブが続いているということではありません。たくさんのカーブがあるという意味です。いったいいくつのカーブがあるか数えてみてください。
 七曲りには旅人の疲れを癒すようにベロ出し地蔵が置かれています。この大きく舌を出したお茶目な地蔵さんは七曲りなどの急な登りを越えてほっと一息入れる場所などに置かれています。ぜひ探してみてください。きっと疲れた体を癒してくれるでしょう。

ここが一番の難所と聞いたことで気後れしそうになるとともに、「ここを乗り越えればゴールは目の前だ!」というモチベーションが湧いてきました。コース全体のイメージを把握しながら登れるのも、専属ガイドの強みかもしれません。

ガイドで教えてもらった「ベロだし地蔵」を探してみると、カーブの周辺にお茶目なお地蔵さんを発見。ちょこっとベロを出した表情がなんとも可愛らしくて、思わずクスッと元気をもらえました。

急な山道を夢中で登り続けていると、小さなお地蔵さんたちは見逃してしまうかもしれません。七曲りのガイドが流れたら、お地蔵さんの姿をぜひチェックしてみてくださいね。七曲りを越えた後も、八鬼山越えに残された足跡はまだまだ続いていきます。蓮華石と烏帽子岩、八鬼山三宝荒神堂と茶屋跡、名柄一里塚…と、この続きの物語は自分の目で、耳で、身体全体で感じながら、体験してみてくださいね。

 

ベロだし地蔵(詳しくは…音声ガイド「八鬼山越え」07|七曲り)

馬越峠・松本峠・八鬼山越えへのアクセス・駐車場について

名称

馬越峠(熊野古道伊勢路)

住所
北牟婁郡紀北町~尾鷲市
電話番号

0597-89-6172

駐車場

道の駅 海山の駐車場などをご利用ください
バスの時刻表などはこちらから(Googleマップ) https://goo.gl/lKN8qQ

公共交通機関でのアクセス

・JR紀勢本線「相賀駅」から徒歩で約30分
・JR紀勢本線「尾鷲駅」からバスで「鷲毛」で約10分

車でのアクセス

・紀勢自動車道「海山IC」から国道42号経由車で約5分

名称

松本峠・花の窟(熊野古道伊勢路)

電話番号

0597-89-6172

駐車場

・大泊側登り口付近に数台

公共交通機関でのアクセス

【スタート地点のJR大泊駅まで】
・JR・近鉄「津駅」から電車で約3時間
・JR紀勢本線「熊野市駅」から電車で約10分

車でのアクセス

・尾鷲熊野道路「熊野大泊IC」から車で南へすぐ

名称

八鬼山越え(熊野古道伊勢路)

電話番号

0597-89-6172

駐車場

向井側登り口付近に数台

公共交通機関でのアクセス

【スタート地点の三重県立熊野古道センターまで】
・JR紀勢本線「大曽根浦駅」から徒歩で約20分

車でのアクセス

・紀勢自動車道「尾鷲北IC」から車で車で約10分

おわりに

音声ガイドを利用して、学びながら熊野古道を歩く巡礼の旅。

気になったときにすぐ確認できる音声ガイドがあることで、歩くだけでは気づけなかった魅力を知り、歴史を肌で感じながら自分らしい巡礼を楽しむことができました。

世界遺産登録から20周年を迎えるタイミングに、ただ見て感じるだけでは味わえない、熊野古道伊勢路を体験してみませんか。

アプリのインストールはこちらから!

馬越峠

https://redirector.on-the-trip.com/redirect?spot_id=632

松本峠

https://redirector.on-the-trip.com/redirect?spot_id=633

八鬼山越え

https://redirector.on-the-trip.com/redirect?spot_id=687

 

観光三重 編集部の画像

観光三重 編集部

熊野古道は世界遺産登録20周年!この機会に三重県にある熊野古道伊勢路の道のりを歩いてみませんか?
熊野古道伊勢路の中でも人気の馬越峠と松本峠の新しい旅の楽しみ方を提案します。

関連スポット

八鬼山からの遠望

八鬼山越え(熊野古道伊勢路)

東紀州

尾鷲市

巡礼者たちに「西国第一の難所」といわれ、かつては山賊や狼が出没した道。 八鬼山越えでは石畳道の傍らに町石をかねた地蔵や石仏、巡礼墓碑が数多く見られます。 三木里への下りは「江戸道」と「明治道」に分かれており、三木峠の先にある「さくらの森」からは熊野灘が一望でき、芝生の広場となっているのでランチ休憩にはオススメの場所です。 登り、下り共に険しい道ですが体力に自信のある方は、昔の巡礼者の気分を味わいながらトライしてみてはいかがでしょうか? ○コースのポイント:尾鷲節歌碑~駕籠立場~十五町石~巡礼碑~桜茶屋一里塚~蓮華石~三宝荒神堂(日輪寺)~名柄一里塚 ほか ○歩行時間:約5時間 ○距離:約10km(三重県立熊野古道センター~JR三木里駅) ○休憩スポット:三重県立熊野古道センター、さくらの森広場 ほか URL:八鬼山峠(東紀州観光手帖) URL:三重県立熊野古道センター【八鬼山越え】 URL:世界遺産 熊野古道伊勢路(三重県庁HP)

松本峠・お地蔵さん

松本峠・花の窟(熊野古道伊勢路)

東紀州

熊野市

熊野市の大泊と木本を結ぶ峠。その道のほとんどに石畳が残っており、名勝・鬼ヶ城の山手に位置しています。 竹林に囲まれた峠には、鉄砲で撃たれたと伝わる地蔵が立っており、途中の梅林からは七里御浜が一望できます。 また松本峠から鬼ケ城展望台を往復するコースを含んでいますので、体力に自信のある方は経由してみてはいかがでしょうか? 松本峠を越えれば新宮まで峠越えはなく、かつての巡礼者が、七里御浜の向こうの新宮に鎮座する熊野速玉大社に思いを馳せたであろう場所です。 ○コースのポイント:江戸の石畳~松本峠と地蔵~峠道の梅林とあずま屋からの眺望 ほか ○歩行時間:約3時間 ○距離:約5km ○休憩スポット:紀南ツアーデザインセンター ほか URL:松本峠(東紀州観光手帖) URL:三重県立熊野古道センター【松本峠】 URL:初めての熊野古道 伊勢路を歩く URL:世界遺産 熊野古道伊勢路(三重県庁HP)

峠道と石畳

馬越峠(熊野古道伊勢路)

東紀州

北牟婁郡紀北町

紀北町と尾鷲市の境界にある人気の峠、熊野古道伊勢路の中で随一と言われる石畳が、尾鷲ヒノキの美林の中に続いています。夜泣き地蔵などの史跡も多く残っており、これぞ熊野古道という雰囲気を味わえます。 峠からは、頂上の絶景が素晴らしい天狗倉山や便石山の山頂へ続く登山コースハイキングコースも有り。峠を下った馬越公園は桜の名所にもなっており、春には大勢の人が訪れる人気スポットです。 ○コースのポイント:道の駅海山~夜泣き地蔵~石橋~馬越一里塚~可涼園桃乙の句碑~桜地蔵~馬越公園~尾鷲神社 ほか ○歩行時間:約2時間30分 ○距離:約5km(道の駅海山~JR尾鷲駅) ○休憩スポット:道の駅海山、馬越公園、まちかどホットセンター ほか →詳しくは、馬越峠コース ウォーキング体験記をご覧ください。 URL:馬越峠(東紀州観光手帖) URL:三重県立熊野古道センター【馬越峠】 URL:初めての熊野古道 伊勢路を歩く URL:世界遺産 熊野古道伊勢路(三重県庁HP) この投稿をInstagramで見る 【公式】観光三重(三重県観光連盟)(@kankomie)がシェアした投稿 - 2019年 5月月17日午後11時32分PDT

Page Top