見て、作って、食べて、感じる萬古焼の魅力を発信「ばんこの里会館」

萬古焼の展示やショップ、陶芸体験を通して、萬古焼の魅力を発信する拠点「ばんこの里会館」を徹底レポートします。

記事制作 / みえ旅アンバサダー 金木犀

▼目次

※記事内の情報は2024年5月時点の情報です。

萬古焼とは

萬古焼は、江戸時代中期に造られ始めた陶器で、ペタライトという鉱石を使用することで耐熱性に優れているのが特徴です。明治時代には洋皿やコーヒーカップ等の洋食器の研究制作が進み、四日市港の開港により、海外にも輸出されました。三重県四日市市の代表的な地場産業であり、三重ブランドにも認定されています。

みなさんは萬古焼はどんなイメージがありますか。土鍋は萬古焼を代表する商品で、生産高は国内の約80%を占めています。街中で見られる国産品土鍋のほとんどが、萬古焼と言っても過言ではないでしょう。近年は、大きさや形状も様々に増え、品目を挙げれば、陶板、タジン鍋、ごはん鍋、炭コンロなど、多彩な商品が開発されています。特に高度な技術を使った電磁調理器用のIH対応土鍋の開発も盛んです。

萬古不易

萬古焼は、江戸時代中期に桑名の豪商・沼波弄山(ぬなみろうざん)が現在の三重県朝日町小向(おぶけ)に窯を開いたことに始まります。弄山は自身の作品がいつまでも変わらず残るようにと「萬古」または「萬古不易」の印を押しました。それが萬古焼の名前の由来といわれています。

萬古焼には、食器や花器など生活を彩る器から工業製品の型まで多種多様な焼き物があります。そのバラエティーの豊かさは、「萬古焼の特徴は『萬古』の印があること」といわれるほど。

陶土などの資源が乏しい土地で、先人たちは技術力を磨き、研究を重ね、各時代のニーズを敏感にとらえて様々な製品を作り出してきました。努力と工夫で300年の間、萬古焼の伝統を繋ぎ、日本有数の陶産地として発展してきたのです。

2018年に迎えた陶祖・沼波弄山の生誕300年から20年後の開窯300年までの間を「BANKO300th」とし、先人達が繋いできた萬古焼の伝統を未来へ受け継いでいくための各種事業を展開・発信しています。

萬古焼の歴史

【有節萬古】

弄山の没後から約半世紀後、森有節(ゆうせつ)・千秋(せんしゅう)という兄弟が萬古焼の復興を目指し開窯します。兄の有節は木工、弟の千秋は発明の天才という工芸的才能に恵まれ、研究熱心だった2人は次々に新しい萬古焼を生み出しました。弄山の時代とは変わって流行し始めた煎茶や国学なども積極的に取り入れ、木型を使って急須を成形する型萬古や金を使った鮮やかなピンクが特徴的な腥臙脂釉(しょうえんじゆう)、粉彩による大和絵の絵付けなどを考案しました。有節らが再興した萬古焼は主に「有節萬古」と呼ばれます。

 

【四日市萬古】

同じころ、四日市末永村の村役だった山中忠左衛門は有節萬古の人気に着目し、村に導入して人々を救いたいと考えました。村は海蔵川・三滝川に挟まれ、度重なる水害で年貢も払えないほど困窮していました。忠左衛門は私財を投げ打って陶法を研究。四日市の東阿倉川の唯福寺で先に始まっていた海蔵庵窯に手ほどきを受けるなど20年の研究の末、1870年にやっと量産できる陶法を確立させると、村人に道具と陶土を与えて指導し陶工を育成しました。これが「四日市萬古」のはじまりです。

長年の研究を経てやっと確立した生産方法でしたが、忠左衛門は惜しみなく公開しました。それによって四日市で萬古焼に参入する人が相次ぎ、優れた陶工らも育ちました。

四日市港や鉄道の整備に伴い、萬古焼は国内はもちろん、輸出も盛んに行われ地場産業としての基盤が築かれました。

 

ペタライト問題

萬古焼の原料の鉱石「ペタライト」は陶器の耐熱性を高める効果があり、1959年から粘土に混ぜて土鍋を焼いており、原材料の4割程度を占めています。

ペタライトはリチウムを含むため、電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の材料として世界的に需要が高まっています。昨年ペタライトの不足が報道されましたが、四日市市内では多くの人の助力があり、今後も土鍋の生産が続けられるよう努力を続けています。

ばんこの里会館とは

ばんこの里会館は、萬古焼の展示や製品の見学、絵付けやろくろを使った陶芸体験など、各種体験コースから、本格的に学べる定時陶芸教室まであり、総合的に萬古焼の魅力を発信する拠点です。夏休みには子供向け体験教室も開かれます。産地ならではの品ぞろえの「うつわ亭」では、お値打ち商品も並びます。2階の「藍川」では、日替わりランチや甘味、夜には予約制で、ふぐやすっぽん、天然うなぎ、萬古焼を使った鍋料理などの会席料理がいただけます。見て、作って、食べて、萬古焼の魅力を体感できる場所です。

毎年5月に開かれる「四日市ばんこ焼陶器まつり 」in 四日市ドームの第2会場にもなります。

2024年の「四日市ばんこ焼陶器まつり 」の情報はこちら

作る!萬古焼

一度は作ってみたいmy萬古焼

会館1Fの陶芸工房では、手軽にできる体験講座(要予約)や本格的に習いたい方の定期教室を開催しています。

陶芸体験コース

・料  金(お1人様):てびねり・・・3,500円

            電動ロクロ・・4,000円

  ※いずれも粘土1㎏で2つまで作れます。

・所要時間:2時間程度

 

絵付け/手彫り体験コース

・料  金:カップ、湯呑、皿・・・1,500円~

      土鍋(6号~)・・・・3,000円~

      蚊やり豚・・・・・・・2,500円~

      手彫り(湯呑)・・・・2,000円~

 ・所要時間:90分程度

 

定時陶芸教室

 ・入会金:6,000円

 ・受講料:月4回コース・・・8,000円

      月3回コース・・・7,000円

      月2回コース・・・6,000円

      月1回コース・・・3,500円

 ・粘土チケット(焼成費込み)

      11枚綴り・・・14,000円

      5枚綴り・・・ 7,000円

      ※特別な粘土・素地は別途要実費

買う!萬古焼

産直ショップ「うつわ亭」

ばんこの里会館2階のうつわ亭では、さまざまな窯元の萬古焼製品が一度に見られるお店。産地ならではの価格と品揃えが自慢です。国内生産第1位を誇る土鍋や陶板などの耐熱製品から、お茶好きに長く愛用される紫泥急須、食器や花器など生活を彩るさまざまな商品があります。

< 営業時間 10:00~17:00 >オンラインショップもあります。

萬古焼の器で食べる和食

会館2階の「藍川」では、日本料理をメインに四季折々の旬の食材を使った多彩なお料理がいただけます。

営業時間

ランチ:12:00~15:00 喫茶は17:00まで

予約制で夜も営業

お品書き

【ランチ】

日替わりランチ  1,200円

四日市まぜめん  1,200円(日曜・水曜 1日10食限定)

日替わり+溶岩ステーキ 2,300円 ※事前に要予約

ランチコーヒー      200円 

 

【お飲み物】

かぶせ茶    500円 

※萬古焼の急須で淹れていただきます。

コーヒー    400円

 

【甘味】

ぜんざい    500円

甘酒      300円

季節のお菓子  300円

 

【夜のお料理】※夜のお料理は事前に要予約。

藍川会席      4,500円

季節会席      5,500円~

お任せコース    9,000円~

ふぐ料理、すっぽん料理、天然うなぎ、萬古焼を使った鍋料理など

 

テイクアウトメニュー

大将が毎日仕入れる新鮮な材料で手づくりしています。

3日前までに予約すれば、お弁当(1200円から)と総菜を予算に合わせてオーダーできます。

当日予約で、

本格和食料理人が作る出汁巻き卵   400円 

季節の煮物             500円~ 

日替わりお惣菜           500円~ 

見る!萬古焼

常設展示室

展示室奥の常設展示室では、江戸時代から現在につながる萬古焼を展示。

四日市港が開港し萬古焼は海外にも輸出されました。海外向けにはウズラや象をモチーフにした土瓶や急須など奇抜なデザインが施されました。

昭和の戦時下には軍事品の耐火れんがや、不足する金属に代わる代用陶器が生産されました。こうした流れは常設展で、実物の陶器を見ながら学べます。

企画展示室

企画展示室では毎回各テーマに沿って様々な展示を行っています。

2024年4月末からは【萬古の耐熱陶器展】を開催。ペタライト質の土鍋が発案され大量生産、急発展を遂げていった耐熱陶器の歴史を紹介·展示しています。

高度経済成長が進むと、土鍋の需要が増え、より安定的大量の高品質の土鍋が生産されるようになりました。土鍋の代名詞ともいえる「花三島」が誕生。このころには土鍋の全国シェアが80%ほどになり、土鍋の名産地としての地位を確立します。

1995年の阪神淡路大震災以降は、オール電化住宅が増え、土鍋も直火用からIH対応の需要も出てきました。こうしてIH対応の萬古焼が誕生しました。

2010年以降は、晩婚化や少子化が進み、土鍋も大きいものから、小さいものへ、1人用土鍋のニーズが高まりました。SNSの発展でアヒージョ皿のような耐熱食器といった「映える」食器というカテゴリーが誕生。調理してそのままテーブルに出せる萬古焼が誕生しました。

こうした流れを実際の作品で見ることができる展示を行っています。

階段の壁には、四日市萬古陶磁器コンペの昨年度の作品を展示

階段

1階から2階への階段の壁には、昨年度の四日市萬古陶磁器コンペの作品を展示。

動物をモチーフにした可愛いらしい作品にも出会えます。

多目的ホール

2024年5月16日(木)から5月19日(日)まで、第38回 四日市萬古陶磁器コンペ2024の作品展が、3階の多目的ホールで開かれます。今年の募集テーマは『祝いのうつわ』。県内外の作家が作った楽しく、華やかな祝いの席で使えるような作品8点が並びます。期間終了後は、昨年度の作品と入れ替え、階段の壁で展示を続けます。

アクセス

住所 〒510-0035 三重県四日市市陶栄町4-8

℡ 059-330-2020 

営業時間 10:00-17:00

休館日 毎週月曜(祝日を除く)夏期休業・年末年始

最新情報はInstagramで発信

アクセス 
電車の場合
・近鉄名古屋線「川原町(萬古焼の郷)駅」から徒歩5分
・近鉄名古屋線「近鉄四日市駅」から徒歩30分
・JR「四日市駅」から徒歩35分

車の場合
・伊勢湾岸自動車道「みえ川越IC」から15分
・東名阪自動車道「四日市東IC」から13分
・東名阪自動車道「四日市IC」から20分

駐車場はばんこの里会館の北側です

駐車場

普通車39台 / バス2台の駐車場があります。

・会館正面から : 会館の前の道を北へ進み、二つ目の角を右折すると駐車場の看板が右手に見えます。

・国道1号から :「陶栄町」の交差点(ホテルルートイン前)を西側に曲がって直進し、左手に駐車場の看板が見えます。

いかがでしたか?

ばんこの里会館へは、陶芸体験をしたり、お値打ちな食器を探したり、ランチに行ったことがありましたが、全体を見たことはありませんでした。改めて見てみると「見て、食べて、買って楽しむ場所」だとわかりました。あなただけのとっておきの萬古焼に出会いに、ばんこの里会館に行ってみませんか。

金木犀の画像

金木犀

ばんこの里会館に初めて行ったのは、子供の夏休みに陶芸体験に行った時。自分で作ったお茶碗には愛着があり、中学生になるまで使っていました。
常設展示室では萬古焼の歴史が学べるので、夏休みの自由研究のテーマにするのもいいですね。
今回取材して、予約すれば夜も本格的な美味しい和食がいただけること、テイクアウトもできることを知りました。今度は美味しいものをいただきに行きたいです。

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