お伊勢さん菓子博「巨大工芸菓子に挑む」和洋菓子職人インタビュー

掲載日:2017.04.14

日本最大級のお菓子の祭典「お伊勢さん菓子博2017」が、4月21日(金)から開催されます。イベントの目玉は歌川広重の浮世絵をモチーフに「伊勢参宮 宮川の渡し」を表現した巨大な工芸菓子。三重県内の和洋菓子職人が力を合わせるこの作品、携わったうちの5人の職人に話を聞きました。

日本最大級のお菓子の祭典「お伊勢さん菓子博2017」が、4月21日(金)から開催されます。
イベントの目玉は歌川広重の浮世絵をモチーフに「伊勢参宮 宮川の渡し」を表現した巨大な工芸菓子。
三重県内の和洋菓子職人が力を合わせるこの作品、携わったうちの5人の職人に話を聞きました。

(記事協力 : 中日新聞社

<第1回>建物の製作担当 南勢地区のリーダー 御菓子処 野むら製菓舗 野村 幸久さん

作ってみたら難しい精密な設計図を作成

野村幸久さんは、今回の工芸菓子で南勢地区を取りまとめるリーダー役。担当するパートは伊勢神宮の正殿、宇治橋、鳥居、旅籠、茶店、遊郭、灯籠、舟。つまり建物を中心とした人工物です。
工芸菓子に取り掛かり始めた当初を、野村さんはこう振り返ります。

「それぞれ思い思いに作ってみるところから始めましたが、平面の浮世絵を立体にするから想像で補わなければならないことが多く難しい。まず設計図を揃え、それに合わせて作らなければ完成しないなと実感しました」。

野村さんは機械設計関連の仕事をしている弟さんに協力を仰ぎ、設計図のノウハウを吸収。建築に関するあれこれを学んで、全ての設計図を書き上げました。


材料とサイズが違うだけ大工と同じ作業で製作

「設計図ができれば、それに従って素材を作り、削るなどしてミリ単位で調整して、組み立てていきます。菓子で作っているというだけで、作業としては本物の建物を作るのと同じことですね」。

野村さんは子どもの頃からジオラマ作りが好きだったそうで、今回のリーダー役は打ってつけ。
湿気にやられて作り直しの苦労はあったものの、完成に向けて仕上げの段階までたどり着きました。

「見えないところまでこだわって作っていますので、ぜひ会場で完成品をご覧ください」。


御菓子処 野むら製菓舗

住所 : 三重県伊勢市吹上2-4-12
電話 :  0596-28-4077
営業時間 : 9:00~19:00(日曜は~18:00)
不定休

<第2回>人形の製作担当 洋菓子部門リーダー 洋菓子タカクワ 高桑 靖さん

父と営む洋菓子店 待望の菓子博開催

高桑靖さんは、菓子博の工芸菓子作りにおいて、賑やかな様子を表現するのに欠かせない人形作りを担当する、三重県の洋菓子職人およそ50人を束ねる3名のリーダーのうちの一人を担っています。
製作する人形の数は約250体。
小型のものは全長10センチ程度ですが、大きなものは全長30センチにも及びます。

高桑さんは工芸菓子作りが動き出した当時をこう振り返ります。

「父がこの店を創業するより以前、40年前の静岡県菓子博で製作した作品で表彰された事を、子どもの頃から知っていました。自分も何らかの形で携われたらいいなと思っていました」と。

年輩者との作業が貴重な経験に

高桑さんにとっては、言わば待ちに待った菓子博の地元開催というわけです。

「チーム内には年上の方もたくさんいます。他のリーダー・サブリーダーの方に力を貸していただきながら、チームで力を合わせて完成が見えてきました。今回は、全国コンテストで活躍される方や和菓子の技術を持った方とも一緒に仕事ができて、貴重な経験になりました」。

人形の見どころについても聞いてみました。

「人形の中にはレスリングのユニフォームを来た吉田沙保里さんや、スーツ姿の鈴木知事なども混ざっています。また、人形の配置、表情、装飾などにもストーリー性を持たせて、細かなところにもこだわっています。ぜひ会場でご覧ください」。

洋菓子タカクワ

住所 : 三重県津市渋見町300-35
電話 : 059-213-3100
営業時間 : 9:00~20:00
定休日 : 火曜日

<第3回>松の製作担当 中勢地区のリーダー 銘菓創庵 新月 川嶋 伸介さん 

松葉の1本から手作り10万本との戦い

川嶋伸介さんは、本業の傍ら津市および伊勢市の専門学校で非常勤講師も務める和菓子職人。
今回の菓子博・工芸菓子作りでは、津市、鈴鹿市、亀山市、松阪市を包括する中勢地区の和菓子職人を取りまとめるリーダーとして、松の製作を担当しています。
針葉樹である松は、無数の松葉が特徴のひとつ。菓子でこれを再現するということは、大変な苦労があるそうです。

「今回製作する松葉は合計で10万本。餡平(あんぺい)と呼ばれる、餡と米粉を蒸し上げた素材を5ミリ程度の大きさにして、ひとつずつ手で延ばして針のようにしていく作業が大半でした」。

感謝と学び多きチームでの仕事

松葉は本数が多いため、一年前から製作に取りかかり、チーム全員で手分けして作っていきます。

「皆さんそれぞれ自分の仕事もあって、その上で時間を作って協力してくれる。60歳を超える大先輩とも一緒に仕事をさせて頂きましたが、お願いした以上の数をこなしてくれたり、非常に頼もしく思いました。今回は勉強させていただいた気持ちが強いです」。

そうして作り貯めた松葉は32本ずつ房にして幹に付けていきます。幹の表面は松の割れた状態も表現しているそうです。

「作品全体を正面から見た時、左手にある大きな3本は特に力を入れています。松は海側と丘側では形が異なっていて、その様子も実物を観察して、リアルに表現しています。そうした細かな違いにも気づいて頂けたら嬉しいですね」。

銘菓創庵 新月

住所 : 三重県津市本町6-8
電話 : 059-227-8846
営業時間 : 9:00~18:30
定休日 : 火曜日

<第4回>自然(山・川・海)の製作担当 巨大工芸菓子すべての統括リーダー 異色ある和洋菓子 富寿家 早川 賢さん

雄大さと繊細さを大自然の中で表現

創業120年の老舗菓子店の4代目であり、三重県菓子工業組合青年部の部長として巨大工芸菓子の全体的な統括も務める早川賢さん。
製作では、たった3人で山・川・海の部分を担当しています。

「山から、五十鈴川、宮川、夫婦岩、海、その中の生き物まで、きっと僕のチームが一番大変です(笑)。山は遠近感を出すために色の濃淡を工夫し、川は砂糖ではなく飴を使って瑞々しさを表現しました」。

また、展示の前面が海の断面になっているため、

「ウニや伊勢エビ、貝類などが見えますよ」

と早川さん。海の中身が見えるようになっています。

創り上げる喜びは人々に感動を与える

早川さんは、巨大工芸菓子の統括リーダーとしての苦労や、やりがいを振り返ります。

「各地区と洋菓子グループのリーダーに具体的な指示を出したり、投げかけたり相談したり、大変でした。技術的には東京製菓学校から校長先生をお招きして、全員ゼロからスタート。結果的には、和菓子店と洋菓子店の垣根をなくして、コミュニケーションを取れたのは嬉しかったですね」。

最後に、工芸菓子の魅力を聞きました。

「創り上げる喜びと共に、魅せる喜びもあります。食べて感動していただくだけではなく見て感動していただく。これからも人を感動させる職人でありたいですね」。

異色ある和洋菓子 富寿家

住所 : 三重県四日市市天カ須賀2-24-21
電話 : 059-365-1277
営業時間 : 8:00~19:00
定休日 : 月曜日(祝日の場合翌日)

<第5回>桜の製作担当 北勢地区のリーダー 夢菓子工房ことよ 岡本 伸治さん

浮世絵と今を融合させた桜

岡本伸治さんは北勢地区を取りまとめるリーダー役で、三重県菓子工業組合青年部の副部長も務めています。
今回の巨大工芸菓子の製作においては、宮川沿いに咲く16本の桜を担当。

「実際に宮川の渡しに行き、対岸から桜の位置関係を把握した上で製作に落とし込んでいきました。浮世絵に桜はないので、現代の姿との融合ということになります」。

16本すべて異なる形にしたり、花びらを9万輪も作ったり、随所にアレンジが加えられています。

「自分で付け足していくという創作的なところが工芸菓子では大事なんです。その先にあるストーリーをどう表現できるかを、いつも考えています」

と岡本さんは語ります。

本物の追求こそが工芸菓子の神髄

工芸菓子の製作で心掛けていることを聞きました。

「いかに本物を追求するかということですね。桜の場合は川岸だから枝が下に伸びているとか、本物の桜の木の下には雑草が生えないとか。モノを作るときは、モノを知らないといけないんです」。

リアリティーを求めて、非常に細かい部分までこだわりを持っているようです。

今回初の試みとなる高校生による工芸菓子展示にも、岡本さんが関わっています。

「私と青年部長で企画を考えました。県内の若くて優秀な子どもたちにも技術を披露してほしくて。プロが魅せる工芸菓子と見比べるのも楽しいと思いますよ」。

夢菓子工房ことよ

住所 : 三重県四日市市西日野町4987-1
電話 : 059-322-1226
営業時間 : 8:00~18:30
定休日 : 火曜日(祝日の場合翌日)

※この取材レポートは、中日新聞に掲載された『お伊勢さん菓子博「巨大工芸菓子に挑む」和洋菓子職人インタビュー』記事を転載しています。

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お菓子の歴史と文化を後世に伝え、お菓子産業の振興を図るため、ほぼ4年に1度開催されてきた「全国菓子大博覧会」。
1911年に東京で「第1回帝国菓子飴大品評会」として始まり、東海エリアでは1977年静岡以来の40年ぶり、三重では初めての開催となります。
ぜひ、お越しください。
お伊勢さん菓子博のキャラクター「いせわんこ」がお待ちしています!

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